ソニーは,高解像度および高速性を同時に両立する車載LiDAR向け積層型直接Time of Flight(dToF)方式のSPAD距離センサー「IMX479」を2025年秋に商品化すると発表した(ニュースリリース)。サンプル価格は35,000円(税込)。
モビリティが自律的に運転操作を行なう自動運転レベル3以上の実用化に向けて,道路状況や車両,歩行者など対象物の位置や形状を高精度で検知・認識可能なLiDARの重要性が高まっており,さらなる技術進化が求められている。
SPAD距離センサーはLiDARの測距方式のうち,光源から対象物に反射して戻ってくるまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで距離を測定するdToF方式のデバイスの一つとして用いられている。
この製品は,裏面照射型のdToF画素を用いた画素チップ(上部)と,新開発の測距処理回路などを搭載したロジックチップ(下部)を,Cu-Cu接続を用いた積層構造により1チップ化している。これにより,10μm角の微細な画素サイズで520dToF画素の高解像度を実現した。さらに,今回新開発の測距処理回路は,複数処理を並列化し,高速処理性能を向上させているという。
これらの技術により,520dToF画素のSPAD距離センサーとして最速となる20fpsのフレームレートを達成している。また,垂直方向における0.05度相当の角度分解能を実現し,垂直方向の検知精度を従来比で2.7倍に向上させた。車載LiDARで重要となる立体物検知において,250m先にある高さ25cmの物体(タイヤ等の道路上の落下物を想定)も立体物として検知することが可能だとしている。
今回,距離分解能を高めるために開発した独自回路は,各SPAD画素のデータを個別に処理し,距離を算出する。これにより,LiDARの距離分解能を5cm間隔まで向上させることに成功した。
さらに,この製品では,画素における光の入射面と底面に凹凸を設け,さらにレンズ形状を最適化した。入射光を回折させて吸収率を高めることで,車載LiDARのレーザー光源として広く普及している940nmの波長に対して,37%の高い光子検出効率を実現している。これにより,100,000lux以上の高照度の背景光環境においても,最長300m先にある対象物を高精度に検知・認識することができるという。