大阪公立大学の研究グループは,既存の酵母株に紫外線を数分間照射することで,D-乳酸の生産量が約1.5倍に増加した新規株の作出に成功した(ニュースリリース)。
現在,石油に代わる新しい炭素の材料として,メタノールのような物質を使って,有用化合物を効率よく作る技術が注目されている。メタノールを栄養として利用できる酵母の一種Komagataella phaffii(K. phaffii)は,環境に優しい方法で化学物質を生産する,有望な微生物として期待されている。
研究グループはこれまでに,メタノールから有用化合物である,D-乳酸を生産できるよう,K. phaffiiの遺伝子を改良した株を作出してきた。今回の研究では,K. phaffiiに紫外線を当てて変異を起こすことで,D-乳酸の生産量をさらに向上させることを目指した。
研究グループは,これまでに開発したD-乳酸生産遺伝子を組み込んだ酵母(K. phaffii GS115/S8/Z3)に,紫外線を当てて変異を起こし,新しい酵母「DLac_Mut2_221」を作出した。この変異体は,従来の酵母と比較して約1.5倍のD-乳酸(5.38g/L)を,メタノールから生産できることを確認した。
さらに,この変異体において,どの遺伝子がD-乳酸の生産に関わっているかを詳しく調べるために,次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行ない,D-乳酸の生産量が向上した遺伝子的背景を明らかにした。
研究グループは,この成果は将来的に,D-乳酸だけでなく,メタノールからさまざまな有用化学物質を生産する技術への応用が期待されるとしている。