京大ら,レーザーでマイクロバブルを生成し振動観測

京都大学と分子科学研究所は,水中に小さな気泡(マイクロバブル)を2個並べて生成し,それらがサブMHzオーダーで同期して振動する様子を捉えることに成功した(ニュースリリース)。

少量の液体を超高速・高周波数で操る技術は,ハイスループットで特徴の違う細胞をソーティングするなど,医療や化学分野で大量のサンプルを処理してデータを取得するために必要な技術となっている。

マイクロバブルの振動は流れや音波を生み出すので,このような液体の操作に適しているが,振動するマイクロバブルを複数個並べたときにどのように振る舞うかわかっていなかった。

研究グループは,レーザー光を用いてマイクロバブルの生成と,そのバブル同士の距離を精密に制御する技術を開発した。光熱変換可能なFeSi2薄膜(厚さ50nm)を脱気水に浸した状態でレーザー照射し,局所的な加熱によってマイクロバブルを形成する。

装置には空間位相変調子が組み込まれており,2つのレーザースポットを生成する。1つのレーザースポット毎に1つのマイクロバブルが生成し,バブル間距離を1μm単位で調整できる。

生成されたバブルは静止しているように見えるが,実際にはMHzオーダーで自発的に振動している。1個のバブルの場合,振動周波数は0.55MHzで,最大半径は6.5μmだった。一方でバブルを2つ生成し,距離を60μmに設定すると,振動周波数が0.50MHzに低下し,両バブルが同位相で同期して振動する様子が超高速度カメラで観察された。

さらに距離を20μmに縮めると,逆位相での同期が見られ,周波数は0.81MHzに増加した。このように,バブル間の距離がわずか10μm変化するだけで振動特性が50%以上も変化することが確認された。この現象は,各バブルの振動が生み出す圧力場による相互作用によって引き起こされることが,理論との比較により明らかとなった。

この手法を使えば,サブMHzオーダーの高速なバブルの動きや周辺の流れをオンデマンドで操作でき,高速化が求められている医療・化学分野の分析やデータ取得に新しい流体制御ツールを与える。また研究グループは,この研究では脱気水を使用したが,水アルコール混合液などでも同様の現象を起こすことができるため,幅広い用途への応用が期待できるとしている。

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