芝浦工大ら,AFM-IRによりナノプラスチックを解析

著者: 梅村 舞香

芝浦工業大学,東レリサーチセンター,山形大学,東洋大学,東北大学は,水中の極めて微量のナノ粒子をマイクロバブルを用いて凝集させることによって濃縮し,その局所的な化学的特性を原子間力顕微鏡(AFM)と赤外吸収分光法(IR)とを組み合わせた方法(AFM-IR)で解析する新しい手法を提案した(ニュースリリース)。

海洋環境に浮遊するマイクロプラスチック(MPs)のうち,特に,ナノプラスチック(NPs)はその小さなサイズにより,MPsよりも生物への影響や環境中での挙動などが十分に解明されていないが,その化学的特性の評価も非常に難しい。

そこで研究グループは,ナノ秒レーザーアブレーションによって低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムから生成されたナノ粒子を使用し,水中の極めて微量のナノ粒子をマイクロバブルにより濃縮し,局所的に AFM-IRで測定する新しい手法を提案した。

今回開発した手法では,ナノ粒子をマイクロバブルによって濃縮させ,AFMを基盤にしたAFM-IRを用いて,その局所的な特性を測定した。研究グループは,ナノ秒レーザーアブレーションにより,LDPEフィルムからサイズが数十nmから数百nmのナノ粒子を得ることに成功した。得られたナノ粒子は水中で極めて微量だが,マイクロバブルを用いて凝集させることによって回収され,セレン化亜鉛(ZnSe)基板上に配置できる。

この基板上に配置されたナノ粒子を,AFM-IRによって詳細に分析した。AFM-IRは,ナノスケールでの局所的な化学的特性を解析できる技術であり,ナノ粒子の分子構造の情報が高精度に測定できる。この研究で提案するこれらのプロセスにより,NPsの酸化反応の進行状況を追跡し,NPsと物質との相互作用を理解することが可能となる。

具体的には,ナノ粒子のサイズ分布は50nm〜500nmの範囲にあり,最も多くの粒子が約200nmの大きさを持っていることが判明した。しかし,粒子の濃度が極めて低いため,マイクロバブルを使って粒子を濃縮する必要があることを確認できた。この手法により,粒子は水中からZnSe基板上に効率よく回収,配置され,AFM-IRによって詳細な赤外吸収スペクトルが取得できた。

AFM測定においてはLDPEナノ粒子の形状を,赤外吸収スペクトルの解析においてはサイズが小さい粒子において酸化反応がより進行している傾向を確認するなど,ナノ粒子の化学的特性の変化について新たな知見を得た。

研究グループは,ナノプラスチックに関する研究の進展が期待される成果だとしている。

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