府大ら,細菌検出の光濃縮システムを小型化

大阪府立大学と村田製作所は,「光濃縮技術」をスマートフォンサイズの筐体に実装した「ポータブル光濃縮システム」を共同開発した(ニュースリリース)。

近年の輸出入の活発化に伴う食の安全保障において細菌検査の技術は必要不可欠であり,医療現場においても,迅速かつ高感度な細菌検出法の開発が求められている。

従来の細菌検出は培養法を基本としているが,結果が得られるまでに1~10日程度を必要とするだけでなく,熟練した知識・技術が要求される。

これらの問題を解決するため,近年では酵素免疫測定法(ELISA法)や,生命体のエネルギー源のアデノシン三燐酸(ATP)を検出することで間接的に細菌の有無を検出する方法の開発も行なわれている。しかし,測定部位に細菌を誘導し,コンパクトな装置で迅速かつ高感度で検出する手段はなかった。

一方,光ピンセット技術は,作用範囲が数マイクロメートル程度のレーザースポット径と同程度であるため,少数の細胞を対象とした精密計測には向いているが,多数の細胞を迅速に捕捉することは困難だった。

今回,大阪府立大学LAC-SYS研究所が有する生化学反応の光誘導加速システムの技術の基盤となる「光濃縮システム」のポータブル化に成功した。

光学系と基板の構造を改良し,光発熱効果による対流とマイクロバブルを高効率に液体サンプル内に発生させ,数ミリメートルに及ぶ作用範囲を実現し,大型の従来機と比べて約1.8倍の捕捉数(濃縮率)のナノ・マイクロ物質を誘導・濃縮・高密度集積することに成功した。

開発した製品は,長さ10cm×幅6cm×厚み2cm(従来システム:長さ87cm×幅67cm×厚み72cm)で,食品工場や病院での細菌検査(食中毒菌,院内感染菌)や環境計測(河川,海洋のマイクロプラスチックや大気中のPM2.5)などの時間を大幅な短縮,測定における高感度化(1つの素子を用いて300秒間のレーザー照射を行なうことで10万個以上の細菌や微粒子を捕捉,素子のアレイ化も可能)を実現した。

また,光濃縮検査により培養検査と比較して,検査時間を300分の1へ短縮(24時間かかる検査と比較した場合,5分間で測定が完了)するという。

両者は,この製品により,現在病院や分析センターにおいて数週間の分析期間を要している細菌検査などを迅速化するだけでなく,携帯性を活かして空港や駅などの公共エリアにおける細菌・ウイルスなどのバイオテロの未然防止など,さまざまなシーンで活用できるとしている。

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