富士通社員,コヒーレント光受信器の開発で紫綬褒章

富士通は,同社社員の星田 剛司氏が,令和7年春の褒章「紫綬褒章」を受章したと発表した(ニュースリリース)。

紫綬褒章は,科学技術分野における発明・発見や,学術およびスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた個人に授与される。

今回の受章は,光ファイバー通信で発生する信号波形ひずみを補正することで大容量・長距離伝送を実現する光通信技術を発明するとともに,光ファイバー伝送システムの開発を通じて日本の科学技術の発展に貢献したことが評価された。

デジタルコヒーレント受信器は,従来の光ファイバー通信に用いられてきた直接検波受信器に対して,雑音に強いという特長があるとともに,光ファイバーの波長分散に起因する信号波形ひずみをデジタル信号処理で補償する能力を備えているため,光ファイバー通信システムの革新につながることが期待されていた。

しかし,信号がより高速化したり,伝送距離が長距離化したりすると,非線形効果(光カー効果)や偏波モード分散など,より複雑な信号波形のひずみが顕著になり,安定した信号受信が困難になるという問題があった。

この課題を解決するため,今回の受賞技術である,高ひずみ耐性デジタルコヒーレント光受信器が開発された。特長の一つは,光ファイバーの有する光カー効果と波長分散の組み合わせで生じる複雑な信号波形のひずみ(非線形ひずみ)を,摂動法と呼ばれる近似解析手法を適用することで簡素な演算で推測することを可能にした点となっている。

これにより,実用化が困難と考えられていた非線形ひずみ補償技術の実用化に世界で初めて成功した。もう一つの特長は,偏波モード分散由来の信号波形ひずみの影響を受けない安定した受信動作を可能にする信号処理アルゴリズムを開発した点で,偏波状態の変動による受信動作の不安定性を解消し,従来のデジタルコヒーレント受信器の限界を突破する広範な伝送条件での安定動作を実現した。

この技術は,100Gb/sの光伝送を実現する同社製品「FLASHWAVE9500」に搭載し,2012年に商用導入されたのを皮切りに,国内外に出荷される各種製品に継続採用されており,最新機種「1FINITY T900」においては,1Tb/s超の大容量光ファイバー通信を支える重要技術として,ICTサービスのバックボーンの進化と,社会の発展に貢献し続けているという。

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