東京大学と中国復旦大学は,単一粒子レベルで不純物の輸送を可視化し、結晶成長が「連続成長」と「溶融・再結晶化」に分岐することを発見した(ニュースリリース)。
結晶成長は,材料科学や工業プロセスにおいて極めて重要な現象であり,その成長過程を適切に制御することは,高性能材料の設計や製造に直結する。しかしながら,成長環境における不純物の影響は非常に複雑であり,従来の研究ではその詳細なメカニズムが十分に解明されていなかった。
研究グループは,コロイド分散系を用い,共焦点レーザー顕微鏡により一粒子レベルの分解能で基板表面での不均一核形成により形成された結晶の成長過程をリアルタイムで観察した。これにより,不純物が比較的高濃度に存在する環境で、単一粒子レベルの結晶化を可視化することに成功しました。
その結果,結晶成長が「連続成長」と「溶融・再結晶化」という2つの異なる成長モードに分岐することを発見した。この「溶融・再結晶化モード」は,結晶化とガラス化の競争によって生じる「脱ガラス化現象」の一形態であると考えられるという。
すなわち,成長過程において局所的な非晶質領域が形成され,一度溶融した後に再び結晶化することで成長が継続するというメカニズムが示唆された。
この研究により,結晶の初期核形成が粒径や成長界面の形状を決定し,それが不純物の輸送に大きな影響を与えることが明らかになった。小さな結晶粒では不純物が粒界に効率的に排斥され,連続的な成長が促進される。一方,大きな結晶粒では不純物が結晶成長界面に蓄積し,局所的な溶融と再結晶化が繰り返されることが分かった。
研究で明らかになった「溶融・再結晶化メカニズム」を利用すれば,成長過程における初期構造を適切に調整することで効率的に不純物を除去できる可能性が示された。また,合金の微細構造制御にも応用できると考えられるという。
具体的には,適切な核形成条件を設定することで,不純物の局所的な蓄積を抑制し,望ましい微細構造を実現することで材料の強度や靭性を向上させることができると期待されるとする。
さらに,不純物の輸送と結晶成長の関係をより詳細に理解することで,ガラス形成やアモルファス材料の特性制御にも応用が可能になると考えられる。例えば,ガラス化を抑制し,制御された結晶成長を実現することで,より均一な微細構造を持つ機能性材料の開発が可能になるという。
研究グループは,液体の過冷却状態における不純物の挙動を考慮することで,ガラス転移の制御や動的異方性の解析にも寄与できると期待されるとしている。