金沢大ら,有機太陽電池の世界最高効率約8%を達成

著者: 梅村 舞香

金沢大学,麗光,加クイーンズ大学は,有機材料で構成されたフィルム型太陽電池において従来の2倍以上の性能を実現することに成功した(ニュースリリース)。

現在の太陽光パネルは,有害性が懸念される金属材料などを含むため,廃棄処理にコストがかかるという課題を抱えている。そこで,有害な金属材料などを含まない全有機太陽電池が注目されている。

しかし,これまでの全有機太陽電池の光を電気に変換する効率は約4%にとどまり,従来のシリコン型太陽電池の効率と比較して低いことが実用化における課題となっている。

研究グループは,世界最高性能を持つ全有機太陽電池の開発に成功した。従来の全有機太陽電池の光電変換効率(PCE)は約4%にとどまっていたが,この研究ではその2倍以上の性能を達成した。全有機太陽電池のPCEが低い主な原因として,二つの課題があった。

一つ目は,十分な導電性を持つ有機透明電極材料で,フィルム型太陽電池に適用可能な材料が限られていること。高導電性の透明有機材料は数例報告されているが,それらの多くは導電性を向上させるために強い酸や塩基の添加,高温での熱処理が必要だった。

しかし,これらの条件は有機材料の基板を損傷させるため,より温和な条件で作製でき十分な導電性を持つ有機電極材料の開発が求められていた。そこで今回の研究では,導電性高分子であるPEDOT:PSSをベースとし,酸や塩基を使用せず低温で作製可能であり,太陽電池の電極として十分な導電性(シート抵抗<70Ω/sq.)を示す透明電極を開発した。

二つ目の課題は,多層膜で構成される太陽電池デバイスを作製する際に,下層や基板を損傷させずに膜を積み重ねていくことが難しい点。特に溶液プロセスを用いた場合,上層を形成する際に下層が溶解したり,膜の均一性が損なわれたりするリスクがあった。この問題を解決するために,研究グループは金沢大学が開発したカーボンナノチューブ電極のラミネーション法を活用した。

この手法では,太陽電池の封止材上に別個に電極を形成し,それを貼り付けることで電極を作製する。この方法を用いることで,カーボンナノチューブ電極を作製する際の溶液プロセスが,下層の有機材料を損傷させることを防ぐことができる。

研究グループは,この結果により,全有機太陽電池の高性能化が進み,実用化に向けた重要な一歩となることが期待されるとしている。

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