静岡大,原始紅藻から集光性色素タンパク質を精製

静岡大学の研究グループは,原始紅藻Galdieria sulphuraria NIES-3638(ガルディエラ)から光化学系I(PSI)と集光性色素タンパク質(LHC)を含む PSI-LHCI複合体を精製した(ニュースリリース)。

シアノバクテリア,藻類,陸上植物を含む酸素発生型光合成を担う光合成生物は,PSIおよび光化学系II(PSII)という二つの膜タンパク質複合体を駆動させることで光エネルギーを化学エネルギーに変換する。LHCは,光エネルギーを効率的に集め,光化学系の反応中心に伝達する役割を果たす。LHCの多様性は,様々な環境に適応するために進化してきた結果と考えられている。

原始紅藻ガルディエラは,高温かつ酸性の極限環境に生息する真核光合成生物であり,進化的にユニークな位置を占めている。この種に特有のPSI-LHCI複合体は,独特のタンパク質構成と光捕集戦略を持つとされ,その詳細な構造や色素組成の解析は,紅藻の光合成適応戦略を理解する鍵となる。

研究グループは,ガルディエラからPSI-LHCI複合体を精製し,そのタンパク質構成,色素組成,およびスペクトル特性を詳細に解析した。

PSI-LHCI複合体は,陰イオン交換クロマトグラフィー,疎水性相互作用クロマトグラフィー,およびトレハロース密度勾配遠心法を用いて精製された。SDS-PAGE解析により,PSI-LHCIにはPSIの主要サブユニットに加え,複数のLHCIタンパク質とRedCAPが含まれていることが明らかになった。

また,RedCAPは,LHCタンパク質とは異なる進化的背景を持ち,PSIに強固に結合していることが確認された。この発見は,PSIとLHCI間の新たなタンパク質相互作用を示唆し,RedCAPがPSI-LHCI複合体の構造的および機能的安定性に重要な役割を果たしている可能性を示している。また他の原始紅藻にはRedCAPが無いため,ガルディエラの特殊な進化的立ち位置を見出した。

さらに,カロテノイド分析では,LHCIにゼアキサンチン,β-クリプトキサンチン,β-カロテンが含まれ,特にゼアキサンチンが豊富であることが確認された。吸収および蛍光スペクトル解析では,PSI-LHCIのQyバンドが幅広く,PSIやLHCI単独のスペクトルとは異なる特性を示した。これにより,PSIとLHCI間の相互作用が光捕集および励起エネルギー伝達に影響を与えていることが示唆された。

研究グループは,この研究の成果は,光合成研究および進化生物学の分野における重要な一歩といえるとしている。

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