東大ら,安価で小型な3D観察用光シート顕微鏡を開発

東京大学,ミユキ技研,日本電気硝子,フォトンテックイノベーションズは,バイオサイエンスや病理等での研究対象である透明化された組織標本の3次元イメージングを,簡単で小型で,解像度は従来の3次元イメージング装置と同等,さらに,導入コストを従来の数10分の1にすることに成功した(ニュースリリース)。

生体の3次元イメージングは,透明化,さらに免疫染色,核染色をした組織標本を光励起し,その蛍光発光をイメージングする。

イメージング方法の一つである光シート顕微鏡は,これまで厚さ5~10μm,幅数mmの光シートを励起光として用い,光シートが照射された2次元領域からの蛍光発光を画像として取得していた。さらに,透明化された組織標本を上下に移動することで,3次元イメージングが可能となる。

これまでの光シート顕微鏡では,レーザー光をレンズやミラーを用いて光シートとしているために,大掛かりな光学系が必要で,さらに光学系の調整等に専門知識が必要。それに加え,導入維持コストが高額という課題があった。

一方,開発した「HandySPIM」は,励起光として安価なLED光を用い,光シートの生成ではレンズやミラーなどの光学系を用いず,超薄板ガラスだけで実現しているため,小型,軽量,安価で,可搬性も実現。さらに,専門的な光学知識や経験も必要ない。

3次元イメージングは,HandySPIMを一般的な顕微鏡のステージに置くことで可能となり,画像の解像度は,使用する顕微鏡で決まる。実際に,東大が開発した透明化技術「LUCID」で透明化した組織標本をHandySPIMと一般の顕微鏡で撮影したところ,高価な3次元イメージング装置で取得した画像と遜色なかった。

細胞は,細胞小器官と内在水で構成され,それぞれの屈折率が異なるために光が散乱され,不透明となる。LUCIDはこの内在液を置換し,組織小器官の屈折率と整合させ,細胞内の屈折率を一様にすることで光の散乱を抑制し,臓器,植物等の生体を透明にする技術で,LUCIDで透明化した標本は,10年以上の保存が可能であることが確認されている。

LUCIDとHandySPIMの組み合わせにより,遠隔病理診断への発展も期待されるほか,小型,メンテナンス不要、安価なことから,高等学校での授業や部活動といった場面でも3次元イメージングの利用を可能とするため,研究グループは,今後3次元イメージングが飛躍的に普及することが期待されるとしている。

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