東大ら,ソフトジャム固体とガラスの繋がりを発見

東京大学と九州大学は,ソフトジャム固体の粘弾性を理解することに成功した(ニュースリリース)。

我々の身の回りには,マヨネーズや泡沫など,固体とも液体ともつかない物質がたくさんある。これらの物質の共通点は,柔らかい球状粒子が乱れた配置のまま固化していることにある。

例えばマヨネーズは油滴が乱雑充填された物質で,泡沫は気泡が乱雑充填された物質。このような物質群を「ソフトジャム固体」と呼ぶ。ソフトジャム固体は変形に対して粘弾性を示すが,これまで,その定量的な理解は非常に困難だった。特に遅い変形に対して粘性が急激に増大する異常粘性損失と呼ばれる現象について,その起源が理解されていなかった。

自然界には,分子や原子が乱雑な配置のまま固化した物質が数多く存在し,ガラスと呼ばれている。例えばシリカガラスは,ケイ素と酸素が乱れた配置のまま動けなくなった物質。構造に注目すると,ソフトジャム固体とガラスは,乱雑であるという点で似通っている。

研究グループは,ソフトジャム固体の代表例として高密度エマルジョンに注目し,実験と理論で粘弾性を研究した。実験的には,直径0.5μm程度の油滴からなるエマルジョンを用意し,マイクロレオロジーという手法により,広帯域での粘弾性測定を実現した。

理論的には,高密度エマルジョンの数理モデルに対して,マイクロレオロジーを記述する線形応答理論を構築し,粘弾性の計算を実現した。実験と理論を直接比較した結果,両者が定量的に一致することを見出した。これにより,よく制御された実験系については,ソフトジャム固体の粘弾性を精密に予言できるようになった。

またこの理論から,ソフトジャム固体の異常粘性損失が,ガラスが普遍的に持つ低周波振動であるボゾンピーク振動と直接的に関係することがわかった。ガラスの中の原子・分子の振動運動は,その構造の乱れに起因して,きれいな平面波だけでなく,空間的に乱れた振動を示すことが知られている。

このような振動はボゾンピーク振動と呼ばれ,長年,ガラスの物理学の主要なテーマの一つとして研究されてきた。研究グループの理論によると,ソフトジャム固体の構成粒子もこのボゾンピークと酷似した低エネルギーの運動状態を示し,この運動状態が大きな粘性を生み出すことがわかった。すなわち,ボゾンピークの理論により,異常粘性損失を説明できることがわかった。

研究グループは,この発見は,ソフトジャム固体の粘弾性を解明するだけでなく,ソフトジャム固体とガラスの隠れた関係を暴くものであり,多様なアモルファス固体の物性の統一的理解を大きく推進する成果だとしている。

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