産総研,レーザーで高感度振動センサーを精密に校正

産業技術総合研究所(産総研)は,世界最小の振動レベルを用いて高感度振動センサーを校正するシステムを開発した(ニュースリリース)。

このシステムは,人工衛星搭載センサーの精度向上を目指し,姿勢制御や太陽電池パネルの向き調整時に発生する微小振動を正確に測定する必要性に応えるもの。

人工衛星は地上に比べて非常に静かな環境で運用されるが,その制御操作に伴うわずかな振動も機器に影響を与える可能性があるため,事前の正確な校正が不可欠。従来の校正システムは,ロケット打ち上げ時に相当する100 m/s²程度の振動レベルでの動作が可能であったが,人工衛星の運用環境に近い0.01 m/s²程度の微小振動での校正には対応していなかった。

新たに開発されたシステムでは,数Hzから6.3kHzの周波数帯域に対応し,最小1.4ピコメートルという世界最小の振幅での校正を実現した。特に6.3kHzでは,従来の校正システムと比較して振動レベルを1/40000に相当する0.0022 m/s²まで低減することに成功した。

この技術は,①ノイズ中から微小信号を抽出する高度な信号処理技術,②加振器から発生する振動が干渉計に伝わらないよう設計された防振技術,③レーザー照射位置を高精度に自動調整する二軸ステージ機構の3つの革新技術によるもの。これらにより,信号対ノイズ比を大幅に改善し,極めて小さな振動レベルでの精密な校正が可能となった。

さらに,計測値の不確かさも詳細に評価し,感度で1.9%,位相シフトで0.76°という高い精度を達成した。このシステムは三菱電機が開発する人工衛星,ETS-9搭載センサーの校正に使用され,実際の軌道環境に近い条件での評価が行なわれた。これにより,軌道上での計測値が打ち上げ前に正確に確認され,センサーの信頼性向上に寄与しているという。

今後,産総研は,この技術のさらなる改良を計画しており,特にノイズ低減技術を強化することで,より微小な振動にも対応できるようにする予定。また,人工衛星分野に限らず,橋梁やビルなどのインフラ構造物の劣化検出や,産業機械の状態監視においても,この技術が活用されることが期待されている。

これにより,さまざまな分野での微小振動計測技術の信頼性向上と幅広い応用が可能になると考えられるとしている。

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