千葉大ら,光スキルミオンを発生するレーザーを開発

千葉大学,英サウスハンプトン大学,千葉工業大学は,緑,オレンジ,赤,深赤の4色で光スキルミオンを発生できる小型ファイバーレーザーを開発した(ニュースリリース)。

近年,不揮発性メモリのキャリアとしてスキルミオンが注目されている。スキルミオンは,3次元空間であるブロッホ球上に現れるすべてのスピンの状態を二次元平面に射影した2次元スピン渦構造。このスピン渦構造は,その安定性から準粒子として扱われ,物性物理学や情報科学の分野で注目を集めている。

光学分野においても,波面や偏光を空間的に制御した光渦や偏光渦を超える光の準粒子として光スキルミオンが実証されている。光スキルミオンは,スピンの代わりに偏光を表す3次元ストークスベクトルを2次元平面に投影したもので,そのストークスベクトルの空間分布からネール型,ブロッホ型,アンチ型などに分類される。

スピンのスキルミオンと同様に外部の乱れや干渉に対して比較的強い安定性があり,自由空間光通信やデータストレージ,マイクロ/ナノスケールでの物質の光操作において革新的な応用が期待されている。また,光スキルミオンは,超解像顕微鏡などへの応用も期待されている。しかし,これまで光スキルミオンを発生する簡便な方法がなかったために,これらの応用研究は未開拓だった。

研究グループは,共振器内にくさび型部分反射鏡を挿入し,その表面および裏面でのシアリング干渉で光渦を発生させ,かつ,レーザー共振器からは共振器の発振モードであるガウスビームを取り出すという二つのビームを同時に発生できるレーザー装置を開発した。

また,発生したガウスビームと光渦モードを偏光干渉させるだけで多様な光スキルミオンを発生することに成功した。さらに,安定した共振器を構成するために配置したレンズの色収差を利用して,球面レンズを共振器の光軸方向に沿って移動させるだけで,Pr3+イオンの発光線に相当する緑(523nm),オレンジ(605nm),赤(637nm),深赤(719nm)の4色の波長の異なる光スキルミオンを単一の共振器から発生させることにも成功した。

研究グループは,この成果は,光スキルミオンのような光の準粒子を用いた微細加工や超解像顕微鏡開発における可能性を示唆し,物理学や材料科学における新たな知見をもたらすとしている。

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