名大ら,光でミュオンビームの分布を計測

名古屋大学,大阪大学,高エネルギー加速器研究機構(KEK)は,発光イメージングを用いてミュオンビームの分布計測に成功した(ニュースリリース)。

ミュオンは素粒子の一種で,様々な研究に利用されている。例えば高エネルギー宇宙線ミュオンは,非常に高い透過性を持つことから,火山や原子炉,ピラミッドなどの巨大構造物の透視に利用されている。

一方で,加速器で生成される高輝度パルス状ミュオンビームを利用することで,ミュオンを用いた元素分析や物性材料研究などを短時間で精度良く行なえる。特に近年は,J-PARC(大強度陽子加速器施設)をはじめとして高輝度のミュオンビームが利用可能となった。

これらの研究にはミュオンビームが,対象にどのように当たっているのか,ミュオンビームの分布やエネルギーの広がりの情報が重要となる。ミュオンビームやミュオンが崩壊してできる陽電子のイメージングができれば,これらの情報を画像から得ることができる可能性がある。

研究グループは,J-PARCの高輝度のミュオンビームと,高感度のCCDカメラを利用することにより,ミュオンビームのイメージングが可能であると予想し,水中で陽電子が放出するチェレンコフ光に注目した。チェレンコフ光は電子や陽電子などの荷電粒子が,水などの物質中を光よりも速く運動するときに生じる。

正電荷のミュオンビームを水に照射すると,ミュオンが飛んでいる途中では光らず,ミュオンが停止したところでミュオンの崩壊によって生じる陽電子のみがチェレンコフ光を出す。そのような陽電子はエネルギーが高いことから比較的強く発光する。そこで,高感度CCDカメラを用いたチェレンコフ光のイメージングを試みた。

その結果,5分間の撮像で楕円形に分布する鮮明なチェレンコフ光画像を得ることに世界で初めて成功した。ミュオンビームのエネルギーを変えてイメージングを行なったところ,チェレンコフ光の発光位置はエネルギーが高くなるに従い,ミュオンビームの照射に対して水のより深い位置に移動した。

またチェレンコフ光に比べ放射線に対して良く発光するプラスチックシンチレータにミュオンビームを照射しながら撮像したところ,10秒間の撮像で,チェレンコフ光に比べ遥かに大きな発光がミュオンビームにより発生し,崩壊前のミュオンビームの分布をイメージングすることができた。

このように,ミュオン照射による水のチェレンコフ光画像とプラスチックシンチレータ発光画像から,ビームに関する多くの情報が得られる可能性が確認できた。今後,ミュオンビームの精度管理や素粒子研究など幅広い分野への応用が期待されるとしている。

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