千葉大,有機EL材料で発電素子を開発

千葉大学の研究グループは,自然に整列する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)用の材料を利用することで,荷電処理を一切要しない「自己組織化エレクトレット」型振動発電素子の開発に成功した(ニュースリリース)。

エレクトレット型の振動発電素子は微小な振動から電力を得ることできる有力なデバイスだが,エレクトレットの作製には荷電処理が必須であり,これが製造コストを増加させる一つの要因だった。

研究グループが注目した有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子用の材料には,永久双極子を持つ分子(つまり極性分子)が数多くある。研究グループは,これらを真空中で成膜することで,極性分子が自発的に基板垂直方向に配向し,一切荷電処理を行なわずとも巨大な表面電位(100nmで数ボルト)が発現することを報告している。

この巨大表面電位を有する膜は「荷電処理が不要なエレクトレット」とみなすことができるという着想に至り,この研究ではこれを「自己組織化エレクトレット(Self-Assembled Electret)」と名付け,その特長を生かして作製が容易な振動発電素子の開発を行なった。

この研究では,エレクトレットを作成するために有機EL素子の材料として利用されているTPBi(1,3,5-tris(1-phenyl1H-benzimidazole-2-yl)benzene)を主に使用した。表面電位は膜厚に比例して増加し(傾き:66mV/nm),500nmで30.2Vに達している。

これはTPBiの永久双極子が基板垂直方向に配向し,荷電処理なしで膜表面に正の分極電荷注が形成されたことを示している。この傾きから表面電荷密度を算出すると 1.7mC/m2となり,コロナ荷電処理後のポリマー型エレクトレットと同等の値となっていることがわかった。

次にTPBi薄膜表面から200μm程度離した場所に振動電極(面積:28.3mm2,振動周期:18.2ms)を導入し,振動発電素子を作製したところ,電極の振動に伴って流れた電流の周期が電極振動に完全に一致した。

この結果は,TPBiを用いることで,荷電処理が一切不要なエレクトレット型の振動発電素子が実現できたことを示している。また光に対する安定性を調べるために,室内光照射下でTPBi振動発電素子を保管し,2.4×104s(6.7h)後に再度電流を測定した。得られた電流値はデバイス作製直後とほぼ一致していることから,TPBiを利用することで光に対する安定性の高いデバイスが実現できた。

この研究は有機EL材料がエレクトレットの材料としても有用であることを実証したものであり,発電素子だけでなく,エレクトレットが使用されるセンサー,マイク等のデバイスの作製プロセスを簡略化や,低製造コスト化に貢献するとしている。

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