東大ら,発光モニタリングで新規絶縁体を創製

東京大学,日本電信電話(NTT)は,電気を通さない物質(絶縁体)の中で,最高の温度(780℃以上)で磁石としての性質(強磁性)を示す新物質Sr3OsO6(ストロンチウム,オスミウム,酸素からなる物質)を世界で初めて合成・発見し,磁性発現の起源となる電子状態を明らかにした(ニュースリリース)。

強磁性絶縁体には,人類が最初に発見した磁石で,方位磁針として使われた磁鉄鉱などがある。それらは現在でも,永久磁石や高周波用素子として,スマートフォン,自動車,パソコンといったありとあらゆるものに使用され,テクノロジーの発展を根底から支えている。近年の電子化の潮流と相まって実用素子への要求性能は高まる一方であり,動作温度に関しては,室温にとどまらず200℃を超える高温での安定動作が求められている。

NTTは,長年にわたり開発・蓄積してきた独自の酸化物合成技術によって,最高のキュリー温度を持つ新物質Sr3OsO6を世界に先駆けて合成・発見した。磁化測定によって見積もられたキュリー温度は780℃を超え,これは,絶縁体のキュリー温度を88年ぶりに100℃以上更新する成果となる。

また,東大と共同で行なった密度汎関数理論に基づく計算により,Sr3OsO6の強磁性絶縁状態が,5d遷移元素であるOs(オスミウム)の大きなスピン軌道相互作用に由来することを明らかにした。

今回,研究グループは,ダブルペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つSr3OsO6薄膜を,分子線エピタキシー法によって創製した。

高品質な薄膜を合成するには,合成時にSr3OsO6を構成するそれぞれの元素の供給量を精密に制御することが重要になる。従来,3000℃以上の融点を持つOs原子の供給量の精密制御は困難とされていたが,供給する原子の量を原子からの発光を利用してモニターし,高出力電子線蒸着源の出力にリアルタイムでフィードバックすることにより,Sr原子とともにOs原子の供給量の精密制御に成功した。

この技術の確立により,原子レベルでSrとOsが規則的に配列した超高品質なSr3OsO6薄膜の合成が可能となった。研究グループは,この物質は,素子化に向けた微細加工と相性の良い単結晶薄膜の形で合成されたため,室温以上の高温で安定に動作する磁気ランダムアクセスメモリや磁気センサーといった,高機能磁気素子の開発につながるとしている。

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