東北大学の研究グループは,特定の組成でメカノルミネッセンス(ML)強度が異常に増強される鉛フリーの新しい多機能材料であるプラセオジム添加ニオブ酸リチウムナトリウムに着目し,これまで謎だった強い発光のメカニズムを原子レベルで初めて解明した(ニュースリリース)。
機械的エネルギーを電気や光に直接変換する材料は,次世代のセンサやエネルギーハーベスティング技術の鍵として注目されている。特に,応力に応じて発光するMLと,電気を発生する圧電性を同時に示すマルチピエゾ材料は,力の分布を可視化できるため,これらを電源不要のセンサなどへ応用しようとする研究が活発化している。
研究グループが注目するセラミックスLi1-xNaxNbO3:Prは,安全な鉛フリーでありながら,強いML特性と圧電性を示す有望な材料。これまでの研究で,組成中のNaの比率を特定の範囲に精密に制御すると,ML 強度が急激に増大することが報告されていたが,その根本的な原因は解明されていなかった。
研究グループは,この性能向上の謎を解き明かすため,九州シンクロトロン光研究センター(SAGA-LS)や大型放射光施設(SPring8)を利用したX線吸収分光法を用いた。これにより,材料全体の平均的な結晶構造だけでなく,機能の源となるNb原子周りの局所的な原子配列や電子の状態を詳細に観察することに成功した。
観察によって,ML強度が最大となるLi1-xNaxの組成比は,結晶構造が菱面体晶から単斜晶へと変化するMPBに一致することを確認した。このMPB領域では,材料の基本骨格であるNbO6八面体のゆがみ方が特異的に変化していることが明らかになった。これは,単に二つの結晶構造が混在しているのではなく,エネルギー変換効率を高める特殊な局所構造が形成されていることを示唆するもの。
さらにNb原子の状態を分析した結果,ML強度が最大となる組成で酸素欠陥の濃度がピークに達することが判明した。これらの結果から,MPB領域で生じる特殊な原子配列のゆがみと,ピークに達した酸素欠陥濃度が互いに影響し合う相乗効果によって,機械的エネルギーから光への変換効率が飛躍的に高まり,強いML発光が引き起こされるというメカニズムを突き止めた。
研究グループは,この研究成果は,橋梁などのインフラの劣化を可視光で診断する超高感度センサや,自己発電型のウェアラブルデバイスなど,未来のスマート社会を実現する高性能な多機能材料の設計に新たな道を開くと期待されるとしている。




