東芝,500km以上の量子暗号通信に成功

東芝欧州研究所傘下のケンブリッジ研究所は,標準的な通信用光ファイバーを用いて通信距離を500㎞以上に拡大する量子暗号通信の新方式「ツインフィールドQKD(QKD : Quantum Key Distribution)」を開発した(ニュースリリース)。

この方式により,例えば,ロンドンとパリ,ブリュッセル,アムステルダム,ダブリン等の都市間を結ぶ光ファイバー網上で,秘匿性の高いデータの安全なやり取りが可能となる。

量子暗号通信は,銀行口座や病歴,ID等の個人情報など秘匿性の高い情報を通信する際,その情報を保護するために重要な暗号鍵の配信に用いることができるセキュリティ技術。暗号鍵を光ファイバー上の単一光子の状態にして符号化し送信すると,光子を読み取ろうとすると状態が変わり,確実に盗聴を検知することが可能なため,暗号鍵の秘匿性が保証される。

他の既存セキュリティソリューションと異なり,量子暗号通信は,光子の量子力学的な性質によって安全性が保証された暗号技術であるため,数学や量子コンピューターなどのコンピューティングにおける将来のいかなる進歩でさえも破れない。そのため,サイバー攻撃に対する通信インフラの保護に必須の手段となることが期待されており,企業活動上のクリティカルな情報の保護に役立てることができる。

これまで光ファイバーを用いた量子暗号通信の距離は200~300kmに限られていた。これは,距離が長くなると情報を伝達する光子が散乱等により失われてしまうため。今回,鍵伝送距離の長距離化と,配信速度を高める手法を考案し,世界で初めて,これまで限界と考えられていた距離を上回る,500㎞以上の量子暗号通信が可能になった。また,鍵配信速度も,従来の到達限界距離で,約300倍以上となる100ビット/秒に達することが試算された。

従来の量子暗号通信では,単一光子がファイバーの一端からもう片方の端まで送られるが,ツインフィールドQKDでは,光のパルスがファイバーの両端から中間点に向けて送られ,中間点で光子が検出される。その結果を利用して,両端で暗号鍵を共有する。

今回,光パルスの送信器や検出器を従来の量子暗号通信と同じ原理で動作できることをシミュレーションで確認し,安全性や通信速度は従来と同様の性能を維持しつつ,通信距離を従来の最大2倍にできることを示した。

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