重要度を増す光技術 ─自動車産業分野を巡る注目の製品

■三菱電機の3D HUD
三菱電機の3DHUD
三菱電機の3DHUD

三菱電機は,フロントガラスに情報を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)のコンセプトモデルとして,裸眼3D表示のHUDの開発状況を発表している。

HUDはフロントガラスに速度などの情報を表示する装置で,運転中にドライバーは視線を計器に移さずに情報を得ることができることから,安全に資するデバイスとして,既に多くの車種で実用化が進んでいる。

同社はHUD表示を3D化することで様々な奥行位置に映像を表示し,実世界と連携させることでよりドライバーに分かりやすい情報を提示する可能性を探っている。例えば交差点上に重畳する矢印の立体表示位置を連続的に変化させることで,ドライバーは交差点までの距離を感覚的に把握することができる。

同社では開発品について簡易評価を行なっており,ドライバーは従来のHUDに比べ,3D表示像を注視した時に,より視線と注意が遠方化することを見出したという。

開発品は1枚のLCDの映像を左右に分割して表示することで3D映像を得ている。実際に体験してみると距離に合わせて滑らかに像の奥行位置が変化する様子が認識できる。ただし,現在のところ3D像を得られる範囲が非常に狭く,像を見るには頭の位置をシビアに調整する必要があるなど,製品化にはまだ時間がかかりそうだ。

■東レ,自動車向けCNT/POFソリューションを提案
自動車向けCNT
自動車向けCNT

東レは透明導電材料として,カーボンナノチューブ(CNT)を用いたフィルムを発売しているが,このフィルムが成型可能なことから,自動車部品への応用を推進している。

スマートホンなどのタッチパネルで利用されているITO膜は曲げると断線するため成型はできないが,CNTは成型しても通電するという特長を持つ。例えばヒーターやカーナビなどのコントロールパネルに,凹凸を付与した静電容量式のタッチセンサーを用いることで,デザイン性を向上さることができる。

また,曲面を持つルームランプに応用すれば,ランプに触れるだけでオン/オフの切替えや調光が可能になるだけでなく,低反射なので調光部材としても適しているとしている。

さらに,3D面状発熱体としての提案もしている。これはCNTフィルムをPC板と共にドーム状に成形したもので,通電によって温度を上げることができる。これを自動車のランプ類にカバー状に取付ければ,降雪時に付着した雪や氷を解かす融雪装置として利用できるとしている。

同社ではこれまでCNTフィルムをタッチパネルの透明導電膜としても提案してきたが, ITOが圧倒的に強い中に合って,CNTで勝負しようとすると「価格で叩かれることも多かった」(担当者)ことから,CNTの長所を活かした独自のアプリケーションの展開を進めてきた。

同社のCNTフィルムの特性はPET/PCベースで,透過率75%のとき表面抵抗値が100 Ωとなっており,メーター幅でのロール出荷も可能だとしている。

また,同社のPlastic Optical Fiber(POF)は,車載ネットワーク規格MOSTに対応しており,これまで欧州の自動車メーカーを中心に供給の実績がある。高い耐ノイズ性を持ち,広帯域である光伝送は車載ネットワークに有利な点が多く,MOSTにも多くの自動車メーカーが参加している。