─光格子時計以外の開発の状況についていかがでしょうか

水中光無線の分野では、青色光が活用されています。水中環境においては青色光の透過性が高く、効率的な通信が可能となるためです。また、光量子もつれを利用したセンシング技術にも注目しています。光量子もつれとは、たとえば1つのレーザー光をダウンコンバージョンによって波長の長い2つの光に分けた際、それらが空間的に離れても相関を保ち続けるという不思議な現象です。
青色レーザーをQPMで変換し、1つを赤外、もう1つを可視光に分けた場合、物質ごとの吸収特性が詳細にわかっている赤外光を対象物質に照射し、一方の可視光を検出器に導くことで、光量子もつれの関係により、可視光を測るだけで赤外光の情報を取得できるのです。この研究は京都大学の竹内先生と共同で進めています。さらに、経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプロ)では、阪大の塚本教授と共同で青色レーザーを用いた積層造形(3Dプリンティング)に取り組んでいます。
青色光は銅をはじめ多くの材料に高い吸収率を持つため、この技術を使わない理由はありません。出力も大幅に向上しており、熱影響の少ない精密な造形を高速で行なえることが期待されています。積層造形分野において、青色レーザーは新たなパラダイムシフトを起こす可能性を秘めています。
─光・レーザー技術、市場を俯瞰されてのお考えについて教えてください
日本はこれまで、半導体レーザーやLEDなどの分野で常に世界の先頭を走ってきました。しかし現在では、他国に後れを取っている状況があり、非常に残念に感じています。かつての栄光を何らかの形で取り戻したいという思いが強くあります。その取り組みの一つが、青色レーザーによる加工技術です。長年力を注いできた分野であり、今後も発展させていきたいと考えています。
もう一つは、青色レーザーを活用した付加価値の高い装置群で、その代表例が光格子時計です。これらの分野は日本としてぜひ盛り上げていただきたい領域であり、国のプロジェクトとして推進されていることは非常に心強く感じています。この方向性で今後も努力を続けていきたいです。さらに、量子技術の分野も国レベルで注目され、活性化してきています。これは非常に良い流れであり、我々としても何らかの形で貢献していきたいと考えています。
─趣味やお休みの日に過ごし方があれば教えてください
大学時代は山岳部に所属しており、今でも時間を見つけて山に登りに行きます。学生当時は1年のうち3分の1を山で過ごすほどでした。特に岩登り(フリークライミング)は今でも続けており、最近は阪大の学生らと一緒に休日に六甲などへ出かけたりもします。また、山に望遠レンズと一眼レフを担いでいって野鳥を撮影するもの楽しいですね。
(月刊OPTRONICS 2025年10月号 Human Focus「新時代の秒へ,光格子時計で挑む未来」)



