安定な有機光触媒を利用した光触媒反応の開発

ミニインタビュー

田中先生に聞く
高還元力光触媒という新しい挑戦

─研究を始めたきっかけから

(田中)私は博士課程の頃から光触媒の研究に取り組み,主に酸化力の高い触媒の開発を進めてきました。3年前に岡山大学に着任したことをきっかけに,新しいテーマに挑戦したいと考え,新たに還元力の高い新規触媒の開発に取り組み始めました。

─研究の面白さを教えてください

(田中)この研究の面白さは,安定性と還元力が高い触媒を独自に開発し,これまでの光触媒では実現できなかった光化学反応を可能にしたことです。

─研究している中で苦労をしていることは

(田中)研究面での苦労としては,講義や学内業務,学会運営など,さまざまな業務に時間が取られてしまい,研究に充てられる時間が十分に確保できないということでしょうか。その限られた時間の中で,どのように研究を進めていくかが大きな課題となっています。

─この研究がどのように応用されることを期待していますか

(田中)今回開発した光触媒は新しいタイプのものであり,世界中の研究者に広く使ってもらえる触媒になることを期待しています。合成方法がシンプルで扱いやすく,さらに光触媒として非常に安定で還元力も高いため,多くの用途で活用してもらえる可能性があります。将来的には,世界で広く使われる触媒へと成長してほしいと考えています。

─若手研究者が置かれている状況について

(田中)現在の若手研究者の雇用状況は,決して良いものとは言えないと感じています。多くの若手向けポストは3年や5年といった任期付きで,安定した雇用が確保されていません。そのため,長期的な研究テーマには取り組みにくく,どうしても短期的に成果を出せるテーマを選ばざるを得ない状況があります。こうした点は,研究の質や継続性の面でも良くないと考えています。将来的には,終身雇用のポストがもっと増えてほしいと強く思っています。

─若手や学生に向けてメッセージをお願いします

(田中)有機化学は,日常生活で使われる医薬品や機能性材料などの開発に大きく貢献できる,夢のある学問です。こうした分野に興味を持つ若手や学生さんが増えてくれたら,とてもうれしく思います。

(聞き手:梅村舞香)

たなか けんた
所属:岡山大学 異分野基礎科学研究所 助教
略歴:2018年3月横浜国立大学大学院環境情報学府博士課程後期修了,博士(工学)。同年4月横浜国立大学大学院 博士研究員,2020年4月東京理科大学 嘱託助教,2021年7月横浜国立大学大学院 非常勤教員,2022年4月より現職。専門:有機合成化学,有機光化学。
趣味:学生と二郎系ラーメンを食べに行くこと

(月刊OPTRONICS 2026年2月号)

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