追手門学院大学の研究グループは,体の奥深くや機械の内部などの温度を正確に測ることができる蛍光温度計の実現に向けYb3+(イッテルビウム)とTb3+(テルビウム)という元素を,LaF3(フッ化ランタン)とLaOF(酸化フッ化ランタン)の組み合わせに加えた新しい蛍光体の作製に成功した(ニュースリリース)。
近赤外線を可視光に変換するアップコンバージョン(UC)技術は,近年注目を集めている。この研究では,LaF3–LaOF複合体をホスト材料として用いた。研究グループは,LaF3からLaOFへの完全な転化よりも,LaF3–LaOF複合体の形成がフォトルミネッセンス(PL)強度をより増強することを実証している。
また,今回の研究ではドーピング材料としてYb–Tbの組み合わせを用いた。Yb–Tbの蛍光は協同過程に起因し,低い発光効率を伴うことが欠点。しかしながら,Tb3+は他の希土類とは異なる分光特性を有するため,特定の波長での発光を実現する上で有用となっている。
今回の研究では,固相反応法によりLaF3–LaOF:Yb3+/Tb3+を合成し,モル比の変化が試料の結晶構造および光学特性に及ぼす影響を分析した。
LaF3へYb3+およびTb3+をドーピングする研究は過去に報告されているが,固相反応法によってYb3+およびTb3+をドーピングしたLaF3–LaOF複合体の発光特性は,これまで報告されていない。さらに,Tb3+をドーピングした蛍光体は温度センサーとして機能することが先行研究で報告されているため,今回の研究においても温度センシングへの応用を目指している。
LaF3–LaOF:Yb3+/Tb3+は固相反応法により合成され,モル比の変化が結晶構造と光学特性に及ぼす影響を分析した。反射率の分析から,波長約950nmにおけるYb3+(2F7/2→2F5/2)の吸収ピークが確認された。
X線回折装置,走査型電子顕微鏡,およびエネルギー分散型X線分析装置による解析から,合成された試料はLaOF:Yb3+/Tb3+およびLaF3:Tb3+から構成されていた。PLスペクトルは波長486nm(5D4→7F6),541nm(5D4→7F5),583nm(5D4→7F4),620nm(5D4→7F3)にピークを示し,特に541nmのピークが顕著だった。
PL強度の励起パワー依存性の分析において,波長486nmおよび541nmにおける傾きが約2になることから,発光メカニズムは2光子過程であることが明らかになった。
研究グループは,この成果は,医療現場や精密機器の温度管理など幅広い分野での応用が期待されるとしている。




