東京大学の研究グループは,光学メタサーフェスを用いた多入力多出力ベクトルビーム変換器の実証に成功した(ニュースリリース)。
多数の空間モードを多重化もしくは分離するには,これまでは複数の光学部品を複合的に組み合わせる必要があり,モジュール全体の小型化と低コスト化を妨げる要因になっていた。さらに偏波モードもあわせて分離するためには,追加で偏波ビーム分離器も必要だった。
これに対して今回の研究では,ジョーンズ行列随伴法という新しい最適化アルゴリズムを開発し,任意の多入力多出力空間・偏波モード変換デバイスを設計できることを示した。さらにその一例として,6個の入力光をそれぞれ異なる空間・偏波モードの光に変換して出力する多重器を作製し,デバイス実証に成功した。
この研究において実験的に実証した空間・偏波モード多重器の構成と顕微鏡像では,厚みが約0.6mmの石英基板の下面に,波長以下の大きさのシリコンナノポストを高密度に配置した反射型メタサーフェスを形成し,上面に金反射膜を堆積している。
上面に形成した開口から入力された光は,メタサーフェスにおいて3回反射した後に,下面の開口から出力される。これにより,3層に重ねたメタサーフェスを透過するのと同じ効果が得られる。メタサーフェスを適切に設計することで,6つの入力光に対して,それぞれ異なる空間・偏波モード変換を行ない,多重化して出力することができる。
このデバイスを逆向きに使用するとモード分離器にもなる。今回は,中心位置の異なる6通りのX偏波のガウシアンビームを入力した際に,それぞれが3つのLPモードのXもしくはY偏波モードに変換されて出力されるように,メタサーフェスを設計した。
実際に入力位置を変えながら出力光の空間強度分布と位相分布をX・Y各偏波成分について測定した結果,6個のビームのそれぞれがLP01,LP11a,LP11bモードに変換されるだけでなく,偏波モードもX・Y の各方向に変換されている様子が分かった。
今回実証したデバイスの入出力面に光ファイバや発光・受光素子を直接実装することで,超小型の空間分割多重光通信用送受信器が実現する。また,メタサーフェスを2次元アレイ状に並べることで,並列化した大容量光送受信器にも展開できる。
さらに今回の実験では,光通信用のモード多重器を実証したが,より複雑な多モード偏波多重コヒーレント受信器や空間モード多重ベクトルホログラフィ用デバイスについても設計を行ない,それらの有効性を数値的に実証している。
研究グループは,次世代の光通信をはじめ,幅広い分野への応用が期待されるとしている。




