新潟大学の研究グループは,高効率・高安定性を有し,光透過性に優れたメソポーラス酸化タングステン(WO3)光酸素発生アノードの開発に成功した(ニュースリリース)。
エネルギー・環境に対する世界的な関心が高まる中,水素は将来のクリーン燃料として注目されており,太陽光を利用した水分解によるグリーン水素製造技術の開発が望まれている。
光電気化学(PEC)水分解は,半導体電極に太陽光を照射して水を酸素(O2)と水素(H2)に分解する反応。WO3は可視光駆動型のPEC水分解における代表的な半導体光酸素発生アノードだが,不活性な表面過酸化物の生成が酸素発生反応と競合するため,PEC水分解の安定性が低く,酸素発生におけるファラデー効率(FEO2)が約70%程度と低い点に課題がある。
特に中性pH条件下で,安定したPEC水分解とFEO2≈100%を実現することは,実用的な太陽光水分解に重要。さらに,次世代のタンデム型PEC水分解デバイスにおいて,光酸素発生アノードで吸収されない光を透過させて対極の光水素発生カソードで利用するために,光透過性の優れた光アノードの開発が求められている。しかし,これまでPEC水分解において高い性能と長期安定性を兼ね備え,光透過性に優れた WO3光アノードは報告されていなかった。
研究グループは,界面活性剤を用いたテンプレートと,独自のin situテンプレート炭化技術を組み合わせることで,フッ素ドープ酸化スズ(FTO)電極上にWO3膜を直接作製した。得られたWO3膜は,高比表面積(124m2g-1),表面反応におけるキャリア移動を容易にする超薄細孔壁(約10nm),および水酸化反応に活性な結晶面の優先的成長という特徴を有することを明らかにした。
この独自構造により,光アノード表面で水からの酸素発生反応が効率的に進行する。その結果,酸化コバルト(CoOx)助触媒を担持したWO3膜は,従来型WO3の約3倍の光電流変換効率を示し,FEO293%で 30時間後もその活性を98%維持する,優れた性能を実証した。
研究グループは,高性能・長期安定性を有する光透過性WO3光アノードを開発したこの研究成果は,PEC水分解による持続可能なグリーン水素製造の実現に向けた重要なブレークスルーだとしている。




