東京科学大学の研究グループは,特殊な無機材料である酸フッ化物をナノ粒子として合成する手法を確立し,これを光触媒として用いることによって,可視光のエネルギーで水から水素を生成する反応の効率を,従来の約60倍にまで高めることに成功した(ニュースリリース)。
光触媒は吸収した光エネルギーを用いて,水を分解して次世代エネルギー物質とされる水素を生成したり,あるいは地球温暖化の原因物質の1つとされる二酸化炭素をギ酸に変換したりする反応を促進することから,持続可能な社会の実現に貢献する技術として注目を集めている。
太陽光を効率的に利用するには,太陽光の主成分である可視光を吸収できる光触媒の開発が不可欠であり,その材料として同一化合物内に複数の陰イオン(アニオン)種を含む複合アニオン化合物が有力候補にあがっている。
酸フッ化物は,酸化物イオンとフッ化物イオンという2種類の陰イオンを含む複合アニオン化合物。研究グループは,鉛とチタンからなる酸フッ化物Pb2Ti2O5.4F1.2が可視光照射下で光触媒として機能することを見出し,その作製技術としてマイクロ波を照射して行なう低温合成法も確立していた。しかし,この酸フッ化物の光触媒活性が,これまで研究されてきた他の複合アニオン化合物と比べて,非常に低いことが課題だった。
今回研究グループは,Pb2Ti2O5.4F1.2を合成する際に,原料として水溶性のチタン錯体を用いることで,ナノ粒子が得られることを発見した。このとき,用いる錯体の種類を変えると,粒子サイズは数十から数百nmの範囲で制御できた。粒子サイズを小さくすると,固体の光触媒中に生じる電子と正孔を効率的に表面反応で利用できるようになる。
Pb2Ti2O5.4F1.2は約500nmまでの可視光を吸収する。合成条件や反応条件を最適化した結果,Pb2Ti2O5.4F1.2は約15%というみかけの量子収率で水から水素を生成した。これは酸ハロゲン化物系の光触媒としては最高の効率。さらに,ある種の金属錯体と組み合わせることで,10.8%という高い量子収率で二酸化炭素からギ酸を生成できることも示した。
研究グループは,エネルギー問題解決に貢献する革新的材料の開発に大きく役立つことが期待される成果だとしている。




