東京科学大学とスイス フリブール大学は,[2.2]パラシクロファンを巧みに利用した,力を可視化する新しい分子ツールを開発した(ニュースリリース)。
研究グループでは,リアルタイムで力に応答して蛍光特性が変化する超分子メカノフォアの開発に取り組んでいる。超分子メカノフォアでは,蛍光団や消光団の集積構造が力によって変化するので,蛍光特性が変化する。
従来の超分子メカノフォアの蛍光特性の変化は,蛍光団や消光団の間に働く相互作用に大きく依存していた。そのため,相互作用の弱い蛍光団や消光団のペアを用いると,ポリマー材料内で集積構造を維持できない場合が多く,力を加えて観察される蛍光特性の変化が限定的になるという課題があった。
研究グループは,[2.2]パラシクロファンの分子骨格の剛直性を積極的に活用し,相互作用が弱い蛍光団2つを用いて,良好な蛍光特性の変化を示す超分子メカノフォアを開発した。導入された水酸基を用いれば,このメカノフォアをポリマー材料であるポリウレタンに導入できる。
力を加える前は,[2.2]パラシクロファンに導入された2つの蛍光団は,構造の剛直さに起因して強制的に近接し,エキシマー蛍光を示す。しかし,導入されたポリウレタン鎖を介してメカノフォアに力が伝わると,蛍光団同士が離れエキシマーを形成しなくなり,結果的に,蛍光団からのモノマー蛍光が観察されるようになる。さらに,この状態から力を取り除くと,蛍光団は再び近接し分子内でエキシマーを形成する。
今回開発したメカノフォアの蛍光特性の変化の度合いを,今回の研究と同種の蛍光団を用いた先行研究のシクロファン型超分子メカノフォアと比較するため,メカノフォアをそれぞれ導入したポリウレタンエラストマーに力を加え延伸したときの蛍光スペクトルの変化を調べた。
今回の研究で開発したメカノフォアを導入したポリマーは,力を加える前,長波長領域でエキシマー蛍光が支配的なスペクトルを示す。力を加えると,エキシマー蛍光は徐々に減少し,短波長領域に観察されるモノマー蛍光の寄与が上昇する。
一方,先行研究で報告したメカノフォアを導入したポリマーは,力を加える前からモノマー蛍光が支配的に観察される。そのため,力を加えても,それほど大きな蛍光特性の変化は観察されなかった。また,今回の研究のメカノフォアを導入したポリウレタンエラストマーは50回の繰り返し伸縮に対し,優れた可逆性を示すことも明らかになった。
研究グループは,この分子モチーフを適用すれば,これまで選択肢として挙げられなかった,蛍光団や消光団を用いて新しい分子を構築できるとしている。




