名大ら,メカノクロミック分子で高分解能圧力測定

名古屋大学と東京都立産業技術研究センターは,押圧により見た目の色の変化を与えるクロミック分子を用いて,空間分解能が高く,かつ可逆性のある機械的圧力測定フィルムを新たに開発した(ニュースリリース)。

メカノクロミズム現象は,圧力センサー,記録デバイス,ディスプレーデバイスなどへの応用が期待されている。これまでメカノクロミック分子の色の変化については,定量的に刺激を加える方法や色の変化を検出する方法が確立されておらず,ほとんど定性的に議論されてきた。

研究グループは,以前の研究でフルオレンとアクリダンという骨格を二重結合で架橋した構造をもつ「フルオレニリデン-アクリダン」化合物が,分子構造の変化に起因したメカノクロミズムを示すことを報告した。

「フルオレニリデン-アクリダン」は,機械的刺激により分子構造が折れ曲がり,型からねじれ型に変化することにより見た目の色が黄色から緑色へと変化する。研究ではこの「フルオレニリデン-アクリダン」を用い,これまで不明であった圧力応答性や応答の空間分解能について定量的測定を行なった。

定量的かつ均一に機械的刺激を加えるため,フルオレニリデン-アクリダンの薄膜サンプルを真空蒸着にて作製した。蒸着膜はねじれ型構造の青色膜として得られ,この青色膜をメタノールの蒸気にさらすと一晩程度で折れ曲がり型構造の黄色膜へと変化することを発見した。

黄色薄膜に対し,平坦なシリコンモールドをナノインプリントで押しつけることで定量的に垂直応力を加えた。黄色薄膜は加えた応力の強さに応じて,黄色から緑色への変化を示した。

紫外可視分光光度計を用いた測定により,垂直応力を加えた薄膜サンプルは,黄色~緑色の波長範囲の反射ピークが応力の強さに応じて減少していた。また,表面電位顕微鏡(KFM)を用いて,メカノクロミズムを分子構造の変化に起因した電気特性の変化として捉えると,応力の強さに応じて表面電位が高くなることを明らかにした。

突起幅を調製したシリコンモールドを作製しナノインプリントで押しつけることで,垂直応力の加わる範囲を制御した薄膜サンプルを準備した。このサンプルに対し,KFMを用いた測定により,「フルオレニリデン-アクリダン」のメカノクロミズムの空間分解能を調査した。

結果から「フルオレニリデン-アクリダン」のメカノクロミズムは,50nm以下の優れた高分解能を示すことを証明した。また,垂直応力を加えた緑色薄膜はアルコールの蒸気暴露や噴霧により黄色へと戻ることがわかった。

ナノメートルスケールの優れた分解能特性は,「フルオレニリデン-アクリダン」のメカノクロミズムが1分子ごとの構造変化に由来していることを証明しており,研究グループは,圧力測定フィルムなどセンシング材料への発展が期待されるとしている。

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