東大ら,発光クロミズム有機結晶を発見

著者: higa

東京大学,横浜市立大学の研究グループは,超弾性に基づいて可逆的な発光クロミズムを示す有機結晶を見出した(ニュースリリース)。

「押す」「擦る」「切る」などの機械的刺激で発光特性が変化するメカノクロミック発光材料は,これら自然界で最も単純といえる刺激を高感度に検出できる。これらの多くは機械的刺激に対して一方向かつ全体的に発光色が変化し,初期状態に戻すには別の刺激(加熱や再結晶など)が必要となる。

有機結晶が示すメカノクロミック発光のメカニズムは,一般に,ある機械的刺激によって結晶からアモルファスあるいは別の結晶相に相転移し,材料全体の発光が変化するという二相モデルで説明される。この場合,機械的刺激によって相転移は不可逆的に一方向に進行し,初期状態に戻すには加熱や再結晶など別の刺激を必要とする。

一方,機械的刺激を与えると発光色が変化し,刺激の除荷により自発的に初期状態に戻る材料は,1種類の刺激で発光が制御できることから有用性が高いと考えられるが,そのような例はいくつかの柔軟性結晶や,数万気圧という圧力下で観測される系などに限られる。

今回研究グループは,黄緑色および黄橙色の結晶多形依存型発光を示す発光を示す7-クロロHPIP(7Cl)について,黄緑色発光を示す結晶(YG,長さ約0.4mm)の一端を接着剤で固定し,反対側を金属ジグで押し下げて圧力をかけた。

その結果,結晶YGが超弾性を示して黄橙色に発光する新たな結晶相が生じ,X線結晶構造解析から結晶YOと一致した。また圧力を取り除くことで自発的に結晶相YGのみの初期状態を回復したことから,このプロセスは可逆的であることが分かった。

この系は超弾性という単一の刺激とその大きさで可逆的に制御できるところに第一の特長があり,さらに連続的な結晶-結晶間の相変化を介して二色発光の存在比を実時間で任意かつ可逆的に制御可能である点に新規性があるという。

今後は,超弾性発光クロミズムを示す結晶の探索を引き続き行なうとともに,より詳細な機構解析を進めたいとしている。また,明確な結晶界面を示しながら発光色が変化するという分子情報に基づく発光挙動に注目し,微小な圧力や変位の検出など,新たな機械的センシングへの展開可能性を探っていく。

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