東大,光学式フレキシブル圧力センサシートを開発

東京大学の研究グループは,垂直方向の圧力とせん断応力の分布を同時に検知可能な光学式フレキシブル圧力センサシートの開発に成功した(ニュースリリース)。

3軸方向が検知可能な圧力センサの中で,光学式圧力センサは,多点での計測,高空間分解能,高耐久性などの利点を備えているため特に注目されている。

しかし,従来の光学式圧力センシングシステムは,複雑な光学系を必要とするため,素子自体が固く,デバイスが厚いことから,柔らかい対象や曲面などへの実装が難しいという課題があった。

今回,研究グループは,フレキシブル面光源,フレキシブル感圧ゴムシート,フレキシブルイメージャーの3層を積層することで,垂直方向の圧力とせん断応力の分布を同時に検知可能な光学式フレキシブル圧力センサシートの開発に成功した。面光源から出た光は,感圧ゴムシート内を通過したのちに,フレキシブルイメージャーで光の強度分布が検出される。

フレキシブル面光源は,ポリジメチルシロキサン(PDMS)を光導波路に用いており,その表面に酸化チタンナノ粒子を分散させた拡散層,および銀を反射層として成膜することで,均一な面光源を実現している。

開発した圧力センサシートは,圧力が加わることで光強度分布が変化し,この光強度分布から垂直方向の圧力とせん断応力の分布を計算することができる。また,フレキシブル感圧ゴムシートとして,厚さ0.8mmの多孔質なPDMSシートを用いることでセンサの感度を向上させることに成功した。

開発した圧力センサシートでは,垂直方向の圧力に対して最小で1キロパスカル,最大で360キロパスカルまでの圧力を検知することができた。また,せん断応力に関しても最小で0.6キロパスカル,最大で100キロパスカルの圧力まで検知することに成功した。

さらに,5mmの格子状に配置した6×8のセンサアレイを用いることで,垂直方向の圧力とせん断応力の圧力分布を同時に計測できることを実証した。

研究グループは,開発した圧力センサシートは,フレキシブルで曲面への実装が可能であるため,今後,ロボットアームへの実装といった電子皮膚への応用のほか,手すりに実装することで,病院などでの歩行中に手すりにかかる力具合を定量的に評価するなど,リハビリやヘルスケア方面での活用が期待されるとしている。

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