東大ら,ひずみが測れる光センサーシートを開発

東京大学,神奈川県立産業技術総合研究所,宇都宮大学,科学技術研究所は,自然界に存在する蜘蛛の脚関節の近くにある細隙器官に似た亀裂の開閉動作を応用した新しい光センサーシートを開発した(ニュースリリース)。

光弾性法,光モアレ法及び熱弾性法などの応力やひずみ計測に向けた従来の光学的手法は,複雑な構造体やリアルタイム計測に課題がある。

研究では,透明導電膜として良く知られるSn添加In2O3(ITO)を用い,試料の引張試験中に表面のITOナノ粒子薄膜に生じる微小な亀裂を表面プラズモン共鳴に応用することで,塗るだけでひずみ計測が可能な新しい光センサーシートを作製した。

20nm程度の粒子径を持つITOナノ粒子は,スピンコーティング法を用いて超弾性体PDMSシート上に堆積させ,溶媒(トルエン)を蒸発させた。PDMSシート上に作製されたITOナノ粒子薄膜は高い柔軟性を示す。

引張試験中に生じたITOナノ粒子薄膜の表面形態を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。試料が引張りを受けると,ナノ粒子薄膜表面上に多数の亀裂が並行に形成され,その密度はひずみに応じて増大した。

一方,この引張りを除荷すると,ITOナノ粒子薄膜の表面亀裂が消失し,亀裂が閉じる。このように,ITOナノ粒子薄膜における亀裂の開閉動作が引張試験中に確認された。

引張試験中のITOナノ粒子薄膜における光学特性と試料の応力分布の分光計測を試料の中心位置で行なった。その結果,ITOナノ粒子薄膜における反射率変化が試料に発生する応力と良い相関性があることが示された。

反射率変化と応力との関係性をさらに検討するために,丸い穴を持つPDMSシートを用いた引張試験を実施した。このような試料は,丸い穴の周辺に応力が集中し,シート面内に不均一な応力分布を与える。

この結果,シート表面の応力分布の違いをITOナノ粒子薄膜の反射率変化で評価できることが示された。さらに,引張試験の繰り返しに対して,可逆的な反射率の変化が観測された。この変化は,ITOナノ粒子薄膜における亀裂の開閉動作に関係する。

最後に,ウェアラブル性能を評価するために,ゴム手袋の人差し指第2関節部位上にITOナノ粒子薄膜を貼り付け,人差し指の屈伸運動に伴う反射率の変化を計測した。

指の曲げ角度の増大と共に反射率の変化が観測され,更に,指の曲げ伸ばしの繰り返し運動に対して,反射率が可逆的に変化し,指の関節部位に発生する応力と反射率変化の関係が示された。

研究グループは,今後は,ハイパースペクトルカメラの適用により,ひずみ領域の2次元的な可視化計測への発展も期待されるとしている。

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