米パデュー大学,米エネルギー省オークリッジ国立研究所,東芝インターナショナル米国社は,パデュー大学原子核工学部の原子炉で,量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD)技術を利用した量子セキュア通信の実証実験に成功したと発表した(ニュースリリース)。
今回のプロジェクトは,米エネルギー省の「原子力大学プログラム」の支援のもと3年間にわたり行なわれ,次世代の先進的な原子炉,特に遠隔地や孤立地域に設置された小型原子炉のデータの伝送を保護するために量子通信技術をどのように適用できるかを実証した。
小型原子炉は,従来のエネルギーインフラの整備が困難または信頼性に欠ける遠隔地や孤立地域において,安定的かつ豊富なエネルギーを供給する手段として注目されている。これらの小型原子炉は,輸送可能で自律運転ができるように設計されており,オフグリッド型の地域コミュニティや軍事基地,研究施設,遠隔産業サイトへの電力供給に適している。
東芝の長距離QKD技術を活用した今回の実証では,原子炉からのデータ伝送が安全に行なえることを確認した。QKDは,量子力学の原理を利用して暗号鍵を生成するもので,傍受が不可能なため,機密性の高い通信ネットワークに適している。
従来の暗号化方法は,解くのが難しい数学的問題にもとづいているのに対し,QKDは量子力学の原理を利用して絶対的なセキュリティを確保する。QKDでは,暗号鍵は光子を使用して量子ビット(キュービット)として送信される。鍵を傍受しようとすると,光子の量子状態が乱され,通信当事者に盗聴の試みがあったことを知らせる。
この方法は,RSAやECCなどの従来の非対称暗号化アルゴリズムを破ると予想される量子コンピューターの脅威に対しても特別に耐性を持つ。QKDを適用することで,量子コンピューターが実用化されても,原子炉のような重要なインフラを安全に保つことができるという。
このプロジェクトで使用されたパデュー大学の原子炉「PUR-1」は,米国で初めて,運転・制御をすべてデジタル技術で行なう。そのため,PUR-1 は実際の原子力施設に量子技術を適用・評価するための理想的なテストベットだとする。
大規模あるいは遠隔の原子炉システムに適用を拡大していく前に,革新的な手法を実験的に検証していくことができる。今回の実証実験では,QKDを適用することで,現在および将来のコンピューティング技術による傍受や暗号解読に対して耐性があるセキュリティレベルで課題に対処しているという。




