東京大学と名古屋工業大学は,2量体チャネルロドプシン(ChR)KnChRの立体構造を,クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)を用いた単粒子解析で決定した(ニュースリリース)。
KnChRは2021年に研究グループにより初めて報告された車軸藻由来のChR。これまで知られてきたChRの多くは青緑光や黄緑色を吸収して機能する。一方,KnChRは450nmという短波長で機能するが,そのメカニズムは不明だった。
研究グループは,cryo-EMを用いた単粒子解析によって,KnChRのアミノ酸残基27-291番に相当する領域の立体構造を2.7Åの分解能で決定した。KnChRは分子サイズが小さいため,単粒子解析による高分解能構造の決定が困難とされている。
今回,人工脂質膜ナノディスクにKnChRを再構成することで,膜環境に近い安定状態を保ちつつ,ナノディスクを含むより大きな粒子として解析を実施した結果,高分解能での構造決定に成功した。
得られた構造情報から,KnChRはCrChR2と同様に2量体を形成することが明らかになった。KnChRのC末端領域については,H275-R291の領域が明確な構造を形成していることが確認された。
ChRは,結合しているレチナールが光を受容して構造変化を起こすことで,チャネルとして機能する。通常,チャネル閉状態ではレチナールはall-trans型構造をとるが,KnChRでは例外的に6-s–cis型構造を有することが明らかとなった。
all-trans型レチナールでは,6番目および7番目の炭素原子により平面構造が固定される。一方,6-s–cis型レチナールではこの部分にねじれが生じ,ポリエン鎖の平面からβ-イオノン環が約140度回転する。
さらに,KnChRをラット大脳皮質由来の初代培養細胞に発現させて神経の発火頻度を評価した結果,藍色光に加えて紫外光も吸収し,神経の発火を引き起こせることがわかった。そこで研究グループは,ChRの吸収波長に関与するレチナール周辺残基とレチナールとの相互作用に注目した。
この研究で明らかになったKnChRの構造から,KnChRの相同残基I129が,レチナールのシッフ塩基近傍に位置し,かさ高い疎水性残基に囲まれていることを明らかにした。KnChRのI129をグルタミンに置換したI129Q変異体を作製し,吸収波長の極大をさらに短波長側へとシフトさせることに成功した。
研究グループは,この研究の成果は,微生物ロドプシンの構造や吸収波長制御機構の理解を深め,さらに新たな光遺伝学ツールの開発に貢献することが期待されるとしている。




