東北大ら,X線で形状記憶合金の原子配列を観測

東北大学,九州大学,古河テクノマテリアルは,X線吸収分光法を用いて、これまで困難だった銅(Cu),アルミニウム(Al),マンガン(Mn)系形状記憶合金の原子の並びを観測した。また,磁気配列構造がCu-Al-Mn合金の原子配列を大きく変化させることを発見した(ニュースリリース)。

Cu-Al-Mn系形状記憶合金は,原料が安価で加工しやすく最も代表的な形状記憶合金であるTi-Ni合金に匹敵する良好な超弾性を発現することから,耐震材料や医療デバイスなど幅広い分野での応用が期待されている。

特に近年は,熱処理によって原子の並び方が変化することが予想されており,より高性能な材料開発のカギとして注目されている。しかし,いくつかの種類の原子のうちどれがどう並ぶのか,その並び方がなぜ・どうやって変わるのかを直接観察することはこれまで困難だった。

研究グループは,X線吸収分光法(XAS)と第一原理計算(DFT)を用いて,熱処理によって生じる合金内部での原子の動きや,原子の並び(構造)の変化を詳細に観測することに成功した。これにより,合金中ではナノスケールでのMn原子濃度のゆらぎが存在することを明らかにした。

特に,合金の強磁性と反強磁性という異なる磁気配列が,Mn原子の移動・拡散に影響し,形状記憶効果をもたらす規則配列構造を形成する駆動力になっていることを世界で初めて詳細に解明した。

この成果は,再利用可能な建築・土木材料や弾性熱量効果を利用した(固体)冷却システムなどへの応用が期待されるCu-Al-Mn系形状記憶合金の高性能化に大きく貢献するものだという。また,金属ガラスや高エントロピー合金といった他の複雑な金属材料の理解にも新たな視点を提供するとしている。

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