東北大,光を用いたアリルアルコール修飾法を開発

東北大学の研究グループは,青色LEDを使う条件にて,環境調和性,実用性に優れたタンデム型上野ストーク環化反応の開発に成功した(ニュースリリース)。

上野ストーク環化反応はアリルアルコールを効率的に修飾する方法として40年以上前から知られている反応で,通常は二つあるアルケン炭素のうちの一箇所で炭素–炭素結合を形成する。

一方,近年では二つあるアルケン炭素のうち二箇所同時に炭素–炭素結合を形成できるタンデム反応が,その効率性から注目を集めている。しかしながら,これまで報告されている手法は有毒な試薬を必要とする点や,反応の実用性が低いなどの課題があった。

研究グループは,近年注目を集めている青色LEDを用いた光触媒反応を利用して,環境調和性と再現性・実用性に優れたタンデム型上野–ストーク環化反応の開発に成功した。アリルアルコールより容易に調製されるヨードアセタールを,光触媒とアミン塩基,水の存在下に電子不足アルケンと共に青色LEDを照射することで,タンデム型上野–ストーク環化反応が進行することを見出した。

様々な環サイズのアリルアルコール基質および電子不足アルケンで良好な収率と立体選択性で反応が進行することがわかった。さらに,これまで上野–ストーク環化反応は,主に環状アリルアルコールを対象としていたが,この手法では直鎖型のアリルアルコールにも適用可能だった。

さらに,ヨードアセタールと同様にアリルアルコールより導かれるヨードメチルジメチルシランにおいてもこの反応が適用可能であることを見出した。ヨードメチルジメチルシランはヨードアセタールと比較して,炭素数が1つ少なく,続く有機分子変換反応により異なる生成物へと導くことができるという差異を有するため,目的に応じた柔軟な反応の設計が可能になる。

この手法を応用することで,他の類似の反応についても,より環境調和性や実用性に優れた方法を開発できる。研究グループは今後,この反応を活用することで医薬品をはじめとする生物活性分子の効率的な合成が可能となり,創薬研究の発展に貢献することが期待されるとしている。

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