東北大ら,量子物質が光で3ピコ秒で変化すると発見

東北大学,名古屋大学,仏レンヌ第一大学,仏ナント大学は,モット絶縁体と呼ばれる量子物質のナノ結晶を用いることにより,巨視的な結晶対称性の変化(逆強弾性転移)が,3ピコ秒という,熱膨張を介する場合の1/100の短時間で完了することを発見した(ニュースリリース)。

ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やニオブ酸リチウムなどの圧電体に電界を印加すると,圧電体がわずかにゆがむことが知られている。こうした光や電場,磁場による物質の結晶構造の変化は,電磁場-力学エネルギーの変換手法として,超音波トランスデューサーやピエゾ素子などへ応用されている。

中でも光による構造変化は,光超音波などによって非接触で精密な操作や検出を可能にする。しかし,現在の光超音波は,金属の熱膨張や熱的相転移といったナノ秒時間スケールの応答を原理としているため,超短パルスレーザーが持つ高速性を十分に活かすことができていなかった。

一方で近年,その電気伝導性や強誘電性,磁性から量子物質が注目されている。特に物質の温度上昇を経ない(非熱的な),超高速構造変化を目指した研究が世界中で進められている。

コヒーレントフォノン(光励起による位相の揃ったフォノンの励起)を介した構造変化はその一つで,ブルーブロンズや遷移金属ダイカルコゲナイドでは,コヒーレント光学フォノンの非線形励起が,巨視的な構造相転移を生じる。

今回,研究グループは,より低周波数(長波長)の音響フォノンに注目し,光励起状態が音響フォノンと結合することで形成されるひずみ波が,量子物質の結晶構造(対称性)の変化を極めて高速に引き起こすことを発見した。

V2O3は,転移温度Tcが150K以下で構造が変化し,菱面体構造の金属相から,単斜晶構造のモット絶縁体相へと金属-絶縁体転移を起こす。これまでにも,エピタキシャル成長させた同物質の単結晶薄膜に対する光照射の実験は多く行なわれてきたが,全てTc直下で行なわれ,光照射による熱的な相転移が注目されてきた。

研究グループが発見した高速な光誘起構造変化は,コヒーレントなひずみ波によって,絶縁体―金属転移がナノ結晶中やナノ結晶間を伝搬することで生じる。こうした高効率,超高速な構造変化は,光音響デバイスの原理として応用が期待できる。

ただ,モット絶縁体におけるコヒーレントなひずみの伝搬(=絶縁体―金属転移)による構造変化の機構は,まだ解明されたわけではなく,研究グループは今後,100アト秒―10フェムト秒領域の光学測定や,~数十フェムト秒領域の時間分解X線構造解析により,より短い時間における真の初期過程の解明を目指すとしている。

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