東北大,カーボンナノチューブの新規合成法を開発

東北大学の研究グループは,カーボンナノチューブ(CNTs)の新たな構造制御合成法を開発した(ニュースリリース)。

CNTsはグラフェンシートが円筒状に丸まった構造を持ち,次世代半導体デバイスの新素材として期待されている。しかし,CNTsの物性は「カイラリティ」と呼ばれる螺旋度に相当する原子構造によって決定され,わずかな違いで金属型と半導体型に分類される。

このため,一種類のカイラリティを持つCNTsを用いたデバイスが理想的であるが,そのカイラリティ制御は極めて困難であり,現在も未解決のままとなっている。

高性能デバイスを実用化するには,均質な性質を持つ半導体素子を大量に作製する必要があるが,従来の合成法では数十種類のカイラリティが混在してしまう。解決策として,一種類のカイラリティのみを選択的に合成する方法が注目されている。

研究グループは,Niを基本触媒として様々な元素を追加した41種類の二元系触媒を作成し,CNTs合成実験を行なった。その結果,Niにスズ(Sn)を混ぜた触媒でカイラル指数(6,5)CNTsの純度が80%以上に向上し,さらにFeを加えたNiSnFe触媒により合成量が6倍以上に増加することを発見した。この触媒を用いて合成条件を最適化した結果,95%以上の超高純度(6,5)CNTsの直接合成に成功した。

さらに,NiSnFe触媒がNiのコアとNiOのシェルに分かれたコア/シェル構造を取り,Ni+Snのコア部にNi3Snという特異な結晶が存在することを確認し,この結晶が(6,5)CNTsのカイラリティを決定する要因であることを明らかにした。

また,超高純度(6,5)CNTsが束状に集合し,蛍光発光寿命が孤立状態に比べ20倍以上長くなることも確認された。この結果は,CNTsが束ねられて結晶構造を形成し,超結晶のような構造体を持つためと考えられるという。

今回,多元系触媒とカイラリティ制御の関係に焦点を当て,NiSnFe触媒の発見によって(6,5)CNTsの超高純度合成を実現した。研究グループは,未解決の課題であったカイラリティ制御に対して新たな道筋を示し,次世代半導体デバイスの実用化にも期待が高まる成果だとしている。

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