日立造船,トチュウ果皮由来の天然ポリマー量産化

科学技術振興機構(JST)は,産学共同実用化開発事業(NexTEP)の開発課題「植物由来機能性新素材の製造技術」の開発結果を成功と認定した(ニュースリリース)。

この開発課題は,九州大学の研究グループの研究成果を基に,日立造船に委託して事業化開発を進めていたもの。そして同社は,高純度のトランス型ポリイソプレンを抽出できる大規模な精製装置を開発した。

中国原産の落葉高木であるトチュウは,葉を杜仲茶,樹皮を生薬として利用されるが,その果皮には天然ゴムの主成分であるシス型ポリイソプレンの立体異性体であるトランス型ポリイソプレン(TPI)が含まれる。

このトチュウ果皮由来TPI(トチュウエラストマー)は,光合成によって植物内に吸収された炭素を利用して合成される。化学合成によるTPIよりも分子量が1桁多く平均100万を超えるのが特長で,バイオ素材では珍しい軟質素材として利用できる。

トチュウエラストマーは熱可塑性があり,熱を加えるとゴム素材に変化するなどの特長がある。また,ほかのバイオ系樹脂との混練が可能であり,硬質バイオ樹脂の代表格であるポリ乳酸に,数%混ぜ練り合わせることで,耐衝撃性の硬質樹脂に加工することができる。この開発では,その成果に基づき事業化に向けた製品仕様を想定し,トチュウエラストマーの生産技術確立を目指した。

開発当初,年産100トン規模のトチュウエラストマーの抽出や精製を目標に装置の設計,検証を進めた。しかし,トチュウエラストマーの需要を再評価した結果,開発規模を年産10トン程度に限定し,より高純度で生産できる精製装置の開発を目指した。

工業的な溶媒抽出プロセスを実現するためには,溶解度の向上に加えて,分離,濃縮,溶媒回収までの工程を,最小限のエネルギーで機能させる総合的な技術開発が求められていた。

抽出システムについては,再利用や分離精製のしやすさを考慮して多くの候補から最適溶媒の選定を行ない,結果1種のエーテル系溶媒による設計を図った。さらにトチュウ果実を打撃,破砕し,果実の割れた隙間から不要な子葉を除去する脱穀手法を採用したことで,年産10トン規模のトチュウエラストマーを高効率に抽出できる精製装置の開発に成功した。

この開発では,開発途中からゴルフボールや3Dプリンターフィラメントなど試作品での市場分析を進めた。そして化粧品など付加価値の高い用途から本格展開することが,市場へのPR効果や採算性の観点からより適切であることが分かった。

トチュウエラストマーは,植物由来の持続可能な新素材という特長を持っているため,新たな用途開発の広がりに伴い,地球環境を保全しつつ新産業への貢献が期待されるとしている。

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