阪大ら,高速MRIで粉体層の粒子群運動をリアルタイム観察

大阪大学,スイス連邦工科大学チューリッヒ校,チューリッヒ大学らの研究グループは,MRIを高速化させることにより,通常観察が困難な粉体層内部の非定常な粒子群運動を,リアルタイムに観察することに成功した(ニュースリリース)。

粉体の運動を把握することは,各種化学プロセスの高効率化・省エネルギー化を行う上で重要となる。特に粉体が,気体や液体と混合状態にある場合,振る舞いは大変複雑であり,これまでその取り扱いの多くを経験に頼ってきた。そこでMRIを,粉体内部の流動構造の観察に用いることが長年期待されてきたが,時間分解能が低いという欠点があり,非定常な運動を観察することは困難だった。

研究グループは,医療用のMRI装置をベースに,16個の受信コイル,並列画像法と,特別に作成した中鎖脂肪酸オイルを内包するカプセル粒子を組み合わせて用いることにより,粉体層内部を数ミリ秒の時間分解能で高速撮影することを可能とした。この手法を用いることにより,200×300平方ミリメートルの観察領域に対して,空間分解能3×5×10立方ミリメートル,時間分解能7ミリ秒での撮影が可能。

この手法を流動層に適用することにより,層内部において自発的に発生する気泡群の成長・合一・分裂など,非定常性が強く従来手法では観察が困難な現象の詳細を明らかにした。またこの手法は,速度計測も可能であり,浮上する気泡まわりの瞬時の粒子速度分布計測も併せて行なった。撮影対象を乱すこと無く,瞬時の粒子群速度分布を任意の断面で得られることは画期的だという。

粉体層中に粗大な物体を貫入させた際,粉体中に衝撃波が発生すると言われていた。高速な現象であるため,これまでその詳細は明らかになっていなかったが,この手法を適用により,衝撃波の空間分布も含めた詳細な観察が可能となった。

この高速計測手法を用いることにより,粉体の物理現象に対する理解をより深めることが可能であると考えられ,今後,粉体が関係する様々な自然現象の把握や,最適な設計や運用に基づく各種粉体工業プロセスの高効率化・省エネルギー化が期待される。また,近年粉体のコンピュータシミュレーションが盛んに行なわれているが,このようなシミュレーションに用いられる数理モデルの評価や改良にも利用できるものとしている。

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