筑波大ら,テラヘルツでガラスのボソンピークを検出

筑波大学と立命館大学,及び韓国Hallym大学は,身近な糖類であるグルコース(ブドウ糖)ガラスに対し,テラヘルツ時間領域分光(terahertz time-domain spectroscopy, THz-TDS)を行ない,ボソンピーク(BP)励起を観測することに成功した(ニュースリリース)。

BPの起源の候補は諸説あり,永らく議論の対象となっているが,近年,「音響フォノンの終わり」説が有力とされている。研究では,吸収係数αを周波数νで2度割った「α/ν2」のスペクトルにBPが明瞭に現われることを示し,ガラスの音響フォノンの終わりをTHz光で検出できることを見出だした。

ガラスのBPは,ガラスの中距離構造のサイズ,即ち結晶における「ユニットセルのサイズ」に対応する大きさを示しており,これはマクロな物理量である密度やずり弾性率との相関がある。THz光による「ボソンピークイメージング」を行なえば,非接触な密度マップ評価などのTHz光の新たな応用が期待される。

また,BPの検出法として良く知られた方法にラマン分光がある。研究では,THz分光とラマン分光を高精度に行ない,それらのスペクトルの「比」をとることによって,「比光振動結合定数」というBP評価の新しい手法を提案した。

これにより,研究対象のグルコースガラスのTHzスペクトルが,従来提案されていた理論モデルから逸脱するという異常を発見した。この異常は,グルコースのみで観測されるものではなく,何らかの新しいガラスのカテゴリーの存在を暗示し,その起源解明はBPダイナミクスの本質の理解にも繋がるという。

これは,赤外(THz)・ラマン分光のスペクトルをそれぞれ単体で見た場合には気付かず,両者の高精度スペクトルを比較することによって初めて得られた知見。

BPは,どんなガラスにもTHz帯に普遍的に現われる。テラヘルツ光でBPを視るという新しい「目」を得ることによって,ガラスの未解決問題とされるBPの起源解明に大きく貢献できることが期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • NTT,グラフェンプラズモン波束を発生/制御/計測 2024年07月26日
  • 【OPK】豊富なインターフェース,各種レーザー測定器をデモ 2024年07月17日
  • 東大,遺伝的アルゴリズムで弾性波の制御構造を設計 2024年07月09日
  • 京大ら,テラヘルツ電磁波の波形計測と制御に成功 2024年07月03日
  • 東工大ら,サブテラヘルツ帯CMOS ICで640Gb/s伝送 2024年06月19日
  • SB,独自アンテナで走行車にテラヘルツ通信 2024年06月05日
  • 京大,テラヘルツ照射で臨界電流の制御を実証 2024年05月28日
  • 京大,サブテラヘルツ帯電波伝搬シミュレータを開発 2024年05月15日