【解説】光で守る農と地域――レーザー技術の鳥獣害対策への応用

近年,国内では鳥獣被害の深刻化に伴い,光技術を応用した新たな対策が進展している。その一例が,NTT e-Drone Technologyが開発した鳥獣害対策専用ドローン「BB102」だ。

農作物への鳥獣被害は年間約200億円に達し,さらに鳥インフルエンザや豚熱といった防疫上の課題も喫緊の対応を要している。BB102は農業用ドローンの技術を応用し,上空から赤色と緑色のレーザーをランダムに照射することで,鳥獣に強い違和感を与えて退避を促進する。スペックルノイズを用いた慣れ対策も施されており,忌避効果の持続性が高い。自動航行機能により,養鶏場や牛舎など広域の対策も容易である。

さらに,屋根や高所の点検用途にも活用できる。実証実験では,カラス,ハト,イノシシ,シカ,カワウ,サギ,ハクビシンなど多様な鳥獣に対して高い効果が確認されている。加えて,害虫駆除の分野でも大阪大学レーザー科学研究所の山本和久氏らがレーザー技術を応用した装置を開発しているが,昨今では熊による人的被害も深刻だ。光技術が農林水産業および地域安全に寄与する領域拡大に期待したい。(月刊OPTRONICS編集長 三島滋弘)

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