虚像で遊ぶ

通勤電車は僕の住んでいる盆地からちょっとした渓谷を抜けて,職場がある平野へと走っていく。列車の窓からは渓谷の四季の移り変わりが眺められ,毎日がプチ観光気分だ。

ひかりがたり1309_p1

或る朝,僕はそんな通勤電車の車両連結部付近の席に座っていた。その日は,たまたま眼の前に立派な体格の紳士が立ちはだかっていたため,向かいの窓を左から右に流れているはずの景色を見ることはできなかった。しかし,左横を見てみると,向かいの窓とは垂直な配置になっている連結部の窓に,僕が本来見ようとしていた景色が反射して映っている。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  

    新規読者登録フォーム

    関連記事

    • 見ているものは何なのだろう

      著者:納谷昌之 関東では、冬晴れの日が続いている。僕の住む場所からは、青空の下、目の前に広がる丹沢の山並みや、遠く雪を被って鎮座する富士山の、くっきりとした風景を仰ぐことができる。ふと、この風景が、僕の目の中の網膜の上で…

      2026.03.23
    • 衣服で化ける

      僕が子どもの頃,世界にはまだ裸族がたくさん住んでいた。テレビでは,下唇を円盤で大きく広げたり,局部を木の筒に収めただけの姿で裸のまま躍動する人々の暮らしが,様々な番組で紹介されていた。今はどうだろう。先日,アマゾン奥地に…

      2026.02.17
    • 米とひかり

      米のトップブランドといえば「コシヒカリ」だろう。この名前は,越国(こしのくに)の光り輝く品種になって欲しい,という願いのもとに命名された。それ以外にも,米の品種名には「きぬひかり」「ひのひかり」など,「ひかり」の付くもの…

      2026.01.16
    • 鏡という秘境

      鏡は人類にとって最も身近な光学素子と言っても過言ではない。現存する最古の金属鏡は紀元前2800年頃のものらしい。そんな長い歴史を持ちながら,鏡はいまだに謎を秘めている。「鏡に映った自分の姿は左右が反転するのに,上下は反転…

      2025.12.11
    • AIみたい

      8 月のお盆明けに,北アルプスの白馬岳に登ってきた。今回辿った蓮華温泉からのコースは,後立山連峰の新潟側に連なる朝日岳や雪倉岳などの,たおやかな景色を横に眺めながら登る稜線歩きだ。ゆったりとした緑の峰々の,ところどころに…

      2025.11.10

    新着ニュース

    人気記事

    編集部おすすめ

    • オプトキャリア