トイレに咲いた赤い薔薇
家のトイレの窓際に,透明な小瓶に挿した一輪の赤い薔薇が咲いていた。北側窓から差し込む柔らかい光を受けて,まるで微笑みかけてくるように佇むその薔薇に,僕はつい見惚れてしまった。 薔薇の花は,先端がくるっと外側にカールしてい...
2021.03.17
家のトイレの窓際に,透明な小瓶に挿した一輪の赤い薔薇が咲いていた。北側窓から差し込む柔らかい光を受けて,まるで微笑みかけてくるように佇むその薔薇に,僕はつい見惚れてしまった。 薔薇の花は,先端がくるっと外側にカールしてい...
2021.03.17
夜中に顔に冷気を感じて目が覚めた。冬だと言うのに,窓を閉め忘れて寝てしまったようだ。薄暗い部屋の中で,僕はふと雪女を思い浮かべていた。 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)によると,雪女は吹雪と共に現れ,凍えている者に追い討...
2021.02.03
つい数年前,テニスボールの色について一つの論争が巻き起こった。 あるユーチューバーが,ネット上で「テニスボールは何色に見える?」と問いかけたのである。 続きを読む この続きをお読みになりたい方は以下のバナー下...
2021.01.01
どこへ行くのにもマスクをしなければいけない世の中になってしまった。インフルエンザが流行する冬はともかく,酷暑の季節にまでマスクをして修行のような時期を過ごしたのは,人生で初めてのことだ。 マスクをつけているのは息苦しいし...
2020.12.01
この秋,「としまえん遊園地」が閉園された。ほとんどの人たちにとって,そのニュースは見知らぬ街のコンビニが店を閉じた程度の,どうでも良いニュースだったに違いない。 しかし,僕にとってはかなり衝撃的な出来事だ。僕は幼稚園に入...
2020.11.09
雷様になってみたいと思う時がある。裸ん坊に虎のパンツを履いて,頭には取ってつけたような角だ。背中に背負った太鼓をひとたび叩けば,雷鳴轟き,稲妻が走り,下界では「くわばら,くわばら!」とか「へそ隠せ」などと叫びながら人々が...
2020.10.02
子供の頃は,風呂なんて好きではなかった。それなのに,今ではどうだろう。どんなに暑い日でも,シャワーではなく風呂に入りたい。湯船に入るときには「ふぅー」とか「はぁー」とか声を出し,心の中で「いやいやいや…」と訳の分から...
2020.09.01
自宅の僕の部屋の片隅に日本の有名な靴メーカーR社の紙箱がある。箱の中には,僕が大学生だった頃の写真が放り込まれている。僕は時々箱を開けて何枚かの写真を眺めてみる。浦島太郎は玉手箱を開けた瞬間に老人になってしまったが,...
2020.08.03
子供の頃,友達のお兄さんがプリズムというものを持ってきて,僕たちに見せてくれた。僕には,それはガラスの塊をえいやと叩きつけて割れ落ちた,ただのかけらのように見えた。 しかし,そのかけらの中を覗いてみると,見えるはずの...
2020.07.07
僕が今暮らしている街は,四方を山と丘に囲まれた盆地の中にある。山を眺めながら暮らそうと選んだ場所なので文句は言えないが,ときどき窮屈に感じて,地平線が見えるような平原に住めばよかった,などと,今更なことを思うこともあ...
2020.07.07