フォトニクス黎明期から現在まで

HAROLDが埋めた「空白」

─高出力レーザー向けソフトも製品化されています

高出力レーザー向けの製品「HAROLD」は、スペインのマドリード大学で開発されていた高出力レーザー向けモデルを基に、2000年前後に商用化したソフトウェアです。

当時の市場には、「高速だが単純すぎるモデル」と、「正確だが実用にならないほど遅いモデル」しかありませんでした。「HAROLD」は、その中間を狙ったツールです。この“空白”を埋める存在として、まさにジグソーパズルの最後のピースのような役割を果たしました。

─HAROLDへの関心が急速に高まっています

理由は二つあります。一つは、我々がエンジン部分に大規模な改良を加えてきたことです。k·pモデルによる利得スペクトル計算の高精度化、トンネル接合や自己発熱の導入など、多くの物理を取り込みました。もう一つは市場の変化です。これまで高価なツールでしか扱えなかった最先端の物理を、より多くの研究者・設計者が使えるようになったことが、大きな反響を呼んでいます。

─量子ドットレーザーを扱える製品もラインアップされています

量子ドットレーザーは、高温動作に強いという大きな利点があります。自動車用途やCPU近傍など、高温環境でレーザーを動作させたい場面では、従来の量子井戸レーザーでは限界がありました。

さらに、量子ドットのサイズ分布を制御することで広い利得帯域を実現でき、コムレーザーや超短パルス発生にも適しています。

ドミニク・ギャラガー氏

光と量子コンピューティング

─量子コンピューティングとフォトニクスの関係

量子コンピューティングの鍵となる概念は「エンタングルメント(量子もつれ)」です。複数の光子をエンタングルさせることで量子状態を作り出します。レーザーはエンタングル光子そのものを生成するわけではありませんが、その出発点として不可欠です。その後の非線形光学過程や導波路・光ファイバにおいて、偏波状態や量子状態をいかに保つかが重要になります。吸収や損失があるとエラー訂正が必要になり、計算コストが急増します。量子状態をいかに長く保つか、ここでもフォトニクス技術が極めて重要です。

若い世代へのメッセージ

─フォトニクス分野を目指す若い世代へアドバイスがあれば

フォトニクスは、通信やデータセンター、センシング、医療、量子技術など幅広い分野を支える、将来性の高い技術分野です。この分野で重要なのは、半導体物理や電磁気学、量子力学といった基礎理論を深く理解することです。基礎は、新しいデバイスや材料に直面した際にも確かな指針となります。

─理論と製造を結びつける視点

また、製造や実装の現実を知ることも不可欠であり、再現性や歩留まりを意識しなければ、技術は社会に定着しません。デバイスから回路、システムまでを横断的に捉える視点を持つことで、研究や開発の可能性は大きく広がります。

─社会実装へとつながる研究

フォトニクスは社会課題と直結し、自らの仕事が実装につながる実感を得やすい分野です。若い研究者・技術者の皆さんには、長期的な視野で専門性を磨き、進化し続けるこの分野に挑戦してほしいと思います。

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