広視野レーザ顕微鏡によるナノ表面形状計測技術

5. 摩擦面の観察

図7 SiC基板上のカーボンナノチューブ配向膜と相手面の接触の模式図
図7 SiC基板上のカーボンナノチューブ配向膜と相手面の接触の模式図

形状計測とは少し異なるが,接触面の微小すき間の計測にも同じ原理を応用することが可能である10)図7はカーボンナノチューブ(CNT)が垂直配向したサンプル表面に,粗面が接触する場合の模式図でありこの材料はCNTの変形による追従性の良い接触材料として期待されている。図8(a)粗面の代わりに透明な平凸レンズを押し当てて接触面を観察した例である。

図8 カーボンナノチューブ垂直配向膜の接触面
図8 カーボンナノチューブ垂直配向膜の接触面

このCNTサンプルはナノレベルの表面粗さ(CNT長さのばらつき,約50 nmRa)を有している。この図の中心に平凸レンズとの接触部があり,接触面圧によってCNTサンプル表面と平凸レンズ間のすき間(光路差)が変化する。このすき間の変化に応じて輝度が変化することが図8(b)のように分かっており,接触材料やしゅう動部品などの接触面の特性評価技術としても期待できる。今後はその定量評価手法の開発に取り組む予定である。

6. おわりに

本計測技術では,たとえば凹部と平板もしくは平凸レンズの組み合わせのように,サンプルに参照板を接触させて使用すれば,光路差が発生する部分に外部振動の影響が入りにくい。また,この装置の寸法は縦190 mm×横170 mm×高さ80 mmとコンパクトであるため,サブミクロン程度の形状精度が求められる光学部品などの機上計測手法として有用であると考えられる。現在は摩擦面の形状計測にも応用しつつあり,今後幅広い応用の可能性があると考えている。

関連記事

  • 地球と人工知能を繋ぐ光ファイバーセンサー

    5. 展望 将来的に,町全体に張り巡らされている検査用の光ファイバー網(ダークファイバー)を用いて取得したセンシングデータをアンビエント・エージェントに入力することによる都市の意思決定支援システムへの応用が期待される。 …

    2026.02.26
  • 安定な有機光触媒を利用した光触媒反応の開発

    ミニインタビュー 田中先生に聞く 高還元力光触媒という新しい挑戦 ─研究を始めたきっかけから (田中)私は博士課程の頃から光触媒の研究に取り組み,主に酸化力の高い触媒の開発を進めてきました。3年前に岡山大学に着任したこと…

    2026.02.12
  • フォトサーマルナノポアによる単一分子レベルでのラベルフリータンパク質構造ダイナミクス解析技術

    ミニインタビュー 山崎先生に聞く レーザー加熱ナノポア計測の挑戦と未来 ─先生のご研究について紹介いただけますか。 (山崎)私たちは,ナノスケールの小さな孔(ナノポア)を利用した先進的な計測技術の開発に取り組んでいます。…

    2026.01.13
  • 超低電圧で発光する青色有機EL素子の開発

    ミニインタビュー 伊澤先生に聞く 異分野から切り拓く青色有機ELの世界 ─研究を始めたきっかけを教えてください。 (伊澤)もともと私は有機太陽電池の研究を行なっていました。太陽電池の効率を上げるためには,デバイス自体を光…

    2025.12.10
  • イベントベース計算撮像による光沢・透明物の外観検査

    ミニインタビュー 髙谷先生に聞く 光と計算の融合で切り拓く新しい撮像の可能性 ─研究を始めたきっかけを教えてください。 (髙谷)私自身が企業で研究開発を経験し,情報処理推進機構(IPA)の未踏事業に採択された際,必ずしも…

    2025.11.10

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア