新しいレーザー

図3
図3

図3のように,ポンピングのためのレーザービームを細い線状にしておくと,金属原子の反転分布が線状に作られ,X線がこの中を通過するときに増幅されるのです。その結果,コヒーレントなX線ビームが得られます。最初にセレン(Se)で実現し,3.5 nmの波長でコヒーレントなX線を作り出したのです。


図4
図4

厳密に言いますと,図2に描いてあるように,Seが持っている34個の電子の内,灰色で描いてある24個の電子を原子核から解き放つと,図の黒丸の1s(2)2s(2)2p(6)の10個の電子が残ったSe+24イオンできます。Se+24イオンはNe原子と同じ電子配置を持っていることから,このイオンをNe様イオンと言う場合もあります。この状態で,図4のように一番外側になる2p(6)電子の1個を3p準位にポンピングすると,3p準位と直下の3s準位の間に反転分布ができます。これを利用したのがSeを使ったX線レーザーです。

この段階では,想像を絶するほどの大型レーザー装置で作られたレーザーパルスが必要でした。X線レーザーを実現するためには,特別に作られた大型レーザー設備が必要だと考えられたのです。

その後,いろいろな金属で試みられ,いろんな波長でX線レーザーが実現されています。この場合,極めて高いピークパワーを持ったポンピングレーザーパルスで原子のイオン化とそのイオンのポンピングを行う方式でした。一度実現されてしまうと,いろいろと技術の開発が進み,実現されるまでは考えられなかったような簡単な装置でもX線レーザーが作られてしまうのです。同じ話は,科学技術の進歩の世界では,いろいろな場面で登場します。X線レーザーも例外ではありませんでした。

今では,1000分のー以下のレーザーパルスを使ってX線レーザーが実現されています。大学の研究室でも作ることができる大きさのレーザーでも,X線レーザーを作ることができるようになりました。最初はごく低い出力しか得られませんでしたが,出力の大きなX線レーザーを作るのにそんなに時間はかかりません。

今では,実験台の上に乗る程度の大きさのレーザーを使ってエックス線レーザーが,簡単にできる時代になってきました。20年前には,想像すらできない状況です。これなどは,科学の進歩の早さを目の当たりにする良い例でしょう。

X線レーザーのための反転分布をつくるための技術開発はどんどん進んでいきましたが,一方では共振器ミラーの開発が重要となってきました。レーザーである以上,共振器ミラー無くしては語ることができません。異なる金属の薄い層を何層も積み重ねてやると,金属の種類と厚さと層数によって,特定の波長のエックス線に対する反射率の高いミラーを作ることができます。


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