単層カーボンナノチューブ光アイソレーターの研究開発

ミニインタビュー

入田先生に聞く
楽しむことが研究の原動力

─この研究の面白さを教えてください。

(入田)二つの性質を組み合わせて,デバイスを作るような研究です。基本的であるだけでなく,物性現象も面白くて興味深い研究となっています。

─研究している中で苦労していることはありますか。

(入田)苦労しているというのは,研究を楽しんでいることにも通じると思っていますが,まず計測をすることが沢山あるのが大変です。さらに,それをクリアするための計測用のデバイス造りを行ない,自動で計測することによって再現性を高めることにも苦労していますが,どちらもそれ自体を楽しんでいますね。

─この研究がどのように応用されることを期待していますか。

(入田)だんだん普及してきている光回路,光通信といったところに,将来的に使われる技術となれば嬉しいですね。

─若手研究者が置かれている状況をどう思っていますか。

(入田)日本の若手研究者は,世界に比べると研究だけに力を入れられない環境にあると思っています。不安定なポジションの方も多く,そういうところを改善しないと研究者になりたい人も増えないでしょう。実際,研究をやりたくても,家族のために研究者以外の職業に就く方がいるのは残念です。私も今後,上に立つようになったとき,そういったところを改善していきたいと思っています。

─さらに若手や学生に向けてメッセージをお願いします。

(入田)研究はそもそも遊びから始まっていると思っていて,いかに楽しめたかが成果に繋がるはずなので,全力で楽しんでもらえればと思います。結果が出ていないと気づくことがあったら,それは楽しめていないし,まだまだ楽しめる可能性があるということです。いかにそこを楽しめるかという目線でチャレンジしてみてはどうでしょうか。

(聞き手:梅村舞香/杉島孝弘)

イリタ マサル
所属:東京理科大学 研究推進機構 総合研究院
略歴:2016年,東京理科大学大学院 理学研究科 物理学専攻 博士後期課程修了,博士(理学)取得。論文題目は,孤立した単層カーボンナノチューブの成長制御と計測への応用。同年4月より,名古屋大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー 非常勤研究員として,単一多層カーボンナノチューブ電子源を搭載した卓上SEM・X線顕微鏡を開発。2018年より,東京理科大学 理工学部 機械工学科 助教に着任し,Si基板上にWR-2.2規格のTHz WG変換器構造をMEMS技術で実現。2020年より理学部 物理学科 ポストドクトラル研究員,2023年より研究推進機構 総合研究院 講師,現在に至る。
趣味:研究(好きなことを仕事にした)・30歳半ばからは研究だけでなく,子育ても楽しみ中

(月刊OPTRONICS 2025年5月号)

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