JAXA、X線分光撮像衛星が恒星フレアを初観測

宇宙科学研究所(JAXA)は、2つのRS CVn型連星の観測を通して、X線分光撮像衛星XRISMによって初めて恒星フレアを捉えることに成功した(ニュースリリース)。

太陽のような恒星の最外層には、コロナと呼ばれる高温のプラズマが存在する。活動的な恒星のコロナは数千万度に達し、X線を発するプラズマとして観測される。巨大フレアは、このコロナで発生する爆発現象である。太陽では稀、あるいは未だ例のないような巨大フレア現象を調べる上で、恒星観測は代替不可能な役割を果たす。これは、巨大フレアは規模が大きいほど発生頻度が低いためである。

太陽フレアが私たちの文明に与える影響は近年急速に注目を集めており、恒星巨大フレア研究の動機づけの1つとなっている。一方で、恒星フレア観測は対象が遠方にあるため、太陽観測で一般的な「撮像」という手法がとれないという難点もある。このため、「分光」観測によるアプローチが主流となっている。

XRISM衛星は、恒星巨大フレアの高温プラズマを調べる上で最適な分光器を搭載している。XRISMに搭載されたResolveは、鉄のK殻遷移輝線領域において史上最高クラスの分光能力を誇る。この鉄K殻遷移輝線が調査可能なプラズマの温度帯は約1000万度から1億度であり、まさに恒星巨大フレアの高温プラズマ成分に対応する。

実は、鉄K殻遷移輝線領域の一部は、日本の「ひのとり」衛星をはじめとする過去の太陽観測ミッションによって、高スペクトル分解能観測が行われていた。つまり、XRISMの観測により、約50年越しに遠方の恒星で発生する巨大フレアへこの手法を適用・拡張することが可能になったという。性能実証フェーズにおいて、「はえ座GT星」「おうし座V711星」(ともにRS CVn型星)の観測に対してこれを実施した。

静穏時と超巨大フレア発生時に得られた分光スペクトルは、見た目にはその違いがわかりにくい。しかし、適切にモデリングを行うことで、微細構造線の強度が変化していることを示すことができる。XRISMによって初めて分離された輝線も含まれており、恒星巨大フレアの現場におけるプラズマの電子温度、鉄イオン温度、非平衡現象(衝突電離平衡からの逸脱、加速電子の可能性)、元素組成などを複数の輝線強度から診断することに成功した。

得られた結果は、フレアが起こっていない静穏期における平衡仮定の妥当性、フレア期間における高温プラズマ成分の増加、そして太陽観測から提唱されてきたフレアの「標準シナリオ」と矛盾しない元素組成変化など、先行研究の知見と整合的であった。これにより、恒星コロナに対するXRISM時代の超精密分光によるプラズマ診断が適切に実証されたといえる。

(図)RS CVn型連星の想像図(ChatGPTにて作成)とXRISM衛星(Credit: JAXA)

今回の観測ではフレアの全期間が捉えられていたものの、X線光子数の制限から、フレア期間中の時間進化を追うことはできなかった。非平衡現象の顕在化はフレア初期段階に期待され、また温度構造や元素組成の時間変化は理論モデルとの詳細比較を可能にするという。今後、より明るい巨大フレアをXRISMで観測できれば、ブレイクスルーにつながることが期待されるとしている。

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