東京科学大など、可視光応答型光触媒である直方晶四酸化三スズを高活性化

東京科学大学、防衛大学校、三菱マテリアルは、アルミニウム(Al)イオンをドープした直方晶の四酸化三スズ(o-Sn3O4)が、高活性な可視光応答型の光触媒として機能することを見いだした(ニュースリリース)。

(図)(a)機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)による各種イオンをドープしたo-Sn3O4の生成自由エネルギーの計算結果(b)、(c)ドープしていないo-Sn3O4とアルミニウムイオンをドープしたo-Sn3O4の走査型電子顕微鏡像(d)可視光照射下における水素生成量

o-Sn3O4は近年研究グループが合成に成功した酸化スズの新しい結晶多形。o-Sn3O4は可視光応答型光触媒として機能することが知られていましたが、さらなる高活性化が求められていた。光触媒の活性向上には、結晶中に異種イオンをドープする手法が一般的に用いられるが、多数のイオン種候補を実験的に検証するには膨大な時間と労力が必要となっている。

研究グループは、マテリアルズインフォマティクス(MI)の手法の1つであるMLIPを用いて各種異種イオンをドープしたo-Sn3O4の構造安定性を計算した。o-Sn3O4の結晶中には2価のスズイオン(Sn2+)と4価のスズイオン(Sn4+)のサイトが存在する。今回の研究では、Sn2+とSn4+それぞれのサイトに約1原子パーセントの割合で異種イオンをドープしたモデルを構築し、MLIPによる生成自由エネルギーの計算を行なった。

次に、MLIPの計算によって予測した異種イオンドープo-Sn3O4について、実際に水熱法を用いて合成を試みた。既報の合成法を基に、異種イオンの金属塩をスズイオンの量に対して5mol%相当で反応容器に加え、水熱合成を行なった。

MLIPの計算で安定、および不安定と予測されたものの双方について、複数試料の合成を試みた。MLIP計算で安定と予測された物質群では、全ての回折ピークが直方晶のo-Sn3O4に帰属された。一方、遷移金属イオンをドープした物質群については、単斜晶m-Sn3O4に帰属されるものやSn3O4以外の結晶相が生成されてしまった。これらの結果は、MLIPの計算による予測とほぼ一致している。

さらに、高角環状暗視野走査透過型電子顕微鏡法(HAADF-STEM)によりAlイオンがドープされているサイトを評価したところ、MLIPの予測どおり、Sn4+のサイトに優先的にドープされていることが分かった。

(図) X線回折パターン:(a)はMLIPの計算で安定と予測された物質群、(b)は遷移金属が異種イオン種となる物質群の結果

合成に成功したAl、Sr、Y、Bの各イオンをドープしたo-Sn3O4について、光触媒活性を評価した。Alイオンをドープしたo-Sn3O4の光触媒活性が飛躍的に向上した。活性向上の一因である、ドープによる電子構造の変化について調べるため、光吸収スペクトルによるバンドギャップ、光電子収量分光による価電子帯の位置を評価したところ、Alイオンのドープの有無で大きな違いは認められなかった。

光触媒活性の向上が確認されたAlドープo-Sn3O4について、合成時のAl塩添加量を変化させた試料を合成した。ここでは、粉末試料よりも構造解析や光電気化学測定に適した薄膜状の試料を作製した。既報の方法と同様に、反応容器内に透明導電膜がコートされた基板を設置し、粉末の合成と同様の条件で水熱反応を行なった。

この結果、Al塩の添加量を増やすにつれて、直方晶状の結晶のサイズが大きくなることが分かった。また、X線回折により結晶性を評価したところ、Alイオンをドープすることで結晶性が向上することが分かった。

最後に、これらの薄膜試料に可視光を照射した場合の水素生成量を測定した。この結果、Al塩添加量の増加とともに光触媒活性も向上し、添加量が5mol%で最大の活性を示した。活性が高かった理由を考察するため、Al塩の添加量5mol%の試料と、ドープしていない試料に対して光電気化学インピーダンス測定を行なった。

この結果、ドープしない試料では、Alイオンをドープした試料と比較して全体的な電荷移動プロセスの効率が低く、バルクからの表面への電荷供給が制限されていることが示唆された。一方、Al塩の添加量が10mol%の場合は、5mol%の試料と比べて光触媒活性が低下した。

研究グループは、今回の研究は、MIを用いた効率的な新材料開発の手法を示すとともに、高性能な新規可視光応答型光触媒材料の創出につながる成果だとしている。

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