世界最大の光技術イベントで感じた「変化の兆し」 Photonics West 2026

日本企業の次の一手

 一方、今年のPWでは日本企業の出展からも変化の兆しがいくつか見て取れた。単に新製品を並べるだけでなく、海外市場で「何を押し出すか」「どこで差別化するか」をより明確にし、次の一手につなげている点が印象的だった。

【写真】連日、多数の来場者で賑わうJapan Pavilion

 海外ではベーシックな材料を全面に押し出しているというFUJITOKは、米国向けに平面基板を訴求。海外営業部担当の久保田克幸氏は「出展するごとに顔なじみが増え、新しい取り組みを聞かれることも増えてきた」と語る。そうした来場者の声に応える形で今回はパターニングを初出展。インパクトを意識した展示を行なうとともに、研磨を含む加工技術を軸に、試作から量産までを見据えた相談に応える姿勢を鮮明にした。

 毎年出展しているARTRAYは、10GigE対応のSWIRカメラを展示。131フレーム/秒で高速動作ができる点に加え、高速なインターフェイスを備えていることが特徴という。出展の基本方針は例年と変わらないとしつつも、「競合の多い、いわゆる普通のカメラは展示せず、マーケットが被らないようにしている」(担当者)と話す。

 ヌヴォトンテクノロジージャパンが展示の目玉に据えたのは、1月にリリースしたばかりの半導体レーザー。マーケティング部の佐々木陽平課長は「海外からの手ごたえを感じている。製造実績、販売数、そして日本製という信頼性をアピールしていきたい」と強調。実績と信頼性を軸に認知を広げようとする姿勢は、グローバル市場での存在感を意識したものだ。

専門家の目には…

【写真】会場を訪れていた東京工科大学・大久保友雅教授

 
 例年、日本からの来場者も多く、東京工科大学の大久保友雅教授は太陽光励起レーザーの研究者として、PWを訪れるのは今回が2回目。「特殊な立場だからこそ」と語り、中国企業を中心に小規模でも結晶を扱う新しい企業を重点的に見て回ったという。

 価格は大きく下がり、品質も一定水準にあると見ており、「安いからこそ比較する価値がある」と語る。

 大阪大学の塚本雅裕教授は、PWの展示について「光源開発中心から、3Dプリンターなどアプリケーション特化へと軸足を移してきたように感じる」とした上で、加工プロセス側と組んで実装へ持ち込む流れが重要になる、と強い口調で話した。

 話題はレーザー核融合にも移り、「大阪大学が保有する大型固体レーザー実験装置『激光XII号』が40年にわたり現役で動き続けている事実は、技術と運用の積み重ねとしてすごいことだ」と感心を寄せた。

国産レーザーと経済安全保障
大阪大学 接合科学研究所
塚本 雅裕 教授

2005年頃から「国産レーザーが必要」と訴えてきた。当時はグローバル化の空気の中で響きにくかったが、コロナ禍や紛争で供給網の脆さが露呈し、「経済安全保障」は一気に現実味を帯びた。NEDOの「経済安全保障重要技術育成プログラム(K-Program)」も国産が十分にないという危機感が出発点だった。今年のPhotonics Westでは、同プログラムにおける成果の社会実装を見据えつつ、世界の最新動向を確かめる場となった。(談)

中空ファイバーが映す勢力図
近畿大学 理工学部 電気電子通信工学科
吉田 実 教授

光通信用デバイスや通信応用からレーザーに転用できる技術の可能性を探りながら今回会場を見て回った。新しいメーカーの出展も見られ、「海外勢の存在感が確実に増し、力の差が開きつつある」と実感。例えば中空ファイバーがあるが、このような先端分野でも中国企業が開発の先頭集団で力を発揮している印象だ。中国などがシェアを拡大しつつある分野でも数年先への一手を見つけられるかが勝負になるだろう。(談)

【写真】会場で取材した、近畿大学・吉田実教授(中央右)と、大阪大学・塚本雅裕教授(中央左)、竹中啓輔助教(左)、東野律子特任研究員(右)
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