都立大ら,単純な酸化処理で室温の電気抵抗率が激減

東京都立大学,大阪大学,東北大学は,単純な酸化処理によって室温での電気抵抗率が約20万分の1に激減する新しい酸化物材料を発見した(ニュースリリース)。

電子相関効果の強い遷移金属酸化物は,温度や電場,磁場などによって結晶構造や化学組成を変調すると大きな性質変化を示すため,機能性材料として幅広く研究されている。特に,酸素量に不定比性がある遷移金属酸化物では,化学的に酸素を脱挿入することで電気抵抗をはじめとする電子物性を制御できるため,次世代メモリーや高感度センサーとしての応用が期待されている。

この研究では,層状ペロブスカイト型クロム酸化物Sr3Cr2O7-δに着目した。2次元的な電気伝導層に閉じ込められた伝導電子は酸素欠損による散乱の効果を強く受けるため,Sr3Cr2O7-δは3次元的なペロブスカイト型構造のSrCrO3-δよりも大きな抵抗変化を示すと予想した。そこで,研究グループはパルスレーザー堆積法を用いて高品質なSr3Cr2O7-δエピタキシャル薄膜を合成。合成直後の薄膜は酸素欠損δを多く含んでおり,高い電気抵抗率を示した。

大気中で薄膜を加熱するという単純な手法で酸素を挿入したところ,加熱温度の増加に伴い格子定数に変化が見られたが,層状ペロブスカイト型構造は維持されていた。この格子定数の非単調な変化は,結晶中で秩序立っていた酸素欠損の配列が一度不規則化した後,酸素挿入反応が進行したことを示していると考えられる。一方,電気抵抗率は著しく変化し,400℃まで加熱したところで合成直後に比べて約20万分の1まで低下。これはSrCrO3で報告された抵抗変化比と比べて600倍以上の大きな変化だった。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光施設フォトンファクトリー(PF)BL-2Aを用いた精密な電子状態評価の結果,Sr3Cr2O7-δ薄膜はCr3+イオンとCr4+イオンの混合原子価状態にあり,Cr3+イオンはCr4+イオンに比べてモットギャップを著しく増大することが分かった。したがって,Sr3Cr2O7-δの巨大抵抗変化は,2次元構造中において酸素欠損配列とクロム原子価数の変化が協奏的に作用することによって誘起されたと考えられる。

遷移金属酸化物には,さまざまな化学組成や結晶構造が知られているため,この研究で得られた材料設計の指針を活用することで,さらに大きな抵抗変化を示す新しい材料の開発が期待されるという。酸素の出入りによって電気抵抗が変化する材料は,特に人工知能(AI)でシナプスの働きを模倣するメモリスタなどへの応用が検討されており,コンピューターの消費電力の削減に寄与する次世代デバイスの開発につながるとしている。

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